
特定技能 介護の業務範囲|できること・できないこと一覧と送迎・医療的ケアの線引き【2026】
結論|3行で理解する
特定技能「介護」で任せる業務の中心は身体介護等(入浴・食事・排せつの介助など)です。レクリエーションや機能訓練の補助、掲示物の管理や物品の補充は身体介護に添える形なら任せられますが、それだけを担当させる(専従)ことは認められていません。
「清掃や洗濯、調理、送迎まで頼んだら在留資格の違反になるのでは」「服薬介助や血圧測定はいいのか」「訪問介護には入れるのか」——この記事は、2026年1月23日閣議決定の分野別運用方針、厚生労働省の運用要領、国際厚生事業団(JICWELS)の公式Q&A、医師法第17条の解釈通知という一次情報をもとに、施設で迷いやすい業務を任せてよい/付随的なら可/任せないの3段階で一覧にします。最後に、職員に配れる業務一覧と、勤務表で線引きを確かめる3つの問いも載せています。(2026年10月時点)
この記事の早見ナビ
- 特定技能 介護の業務範囲は「身体介護等」が中心|3つの層で全体像をつかむ
- 特定技能 介護でできること|身体介護等の具体例
- 付随する支援業務と関連業務はどこまで任せられるか
- 清掃・洗濯・調理・送迎・事務の扱い|迷いやすい業務の一覧
- できない線引き|関連業務への専従と、対象にならない働き方
- 医療的ケアの線引き|医行為のルールは日本人の介護職員と同じ
- 夜勤や一人での業務は任せられるか
- 訪問系サービスの扱い|2025年4月21日からの条件つきの解禁
- 就業場所として認められる範囲|施設・人数枠・協議会
- 技能実習・育成就労・在留資格「介護」との業務範囲の違い
- 職員に配れる業務一覧と、勤務表で線引きを確かめる3つの問い
- よくある質問
特定技能 介護の業務範囲は「身体介護等」が中心|3つの層で全体像をつかむ
初めて特定技能の外国人職員を受け入れる施設で、受け入れ初日までに必ず聞かれるのが「どこまで頼んでいいんですか」という質問です。入浴や排せつの介助はもちろん、記録、送迎、配膳、清掃、洗濯、行事の準備まで、介護の現場の仕事は幅が広く、線引きを決めないまま始めると、現場ごとに判断がばらばらになります。
特定技能「介護」で従事できる業務は、法務大臣・厚生労働大臣などが定める分野別運用方針と、その運用要領で決められています。2026年1月23日に閣議決定された介護分野の分野別運用方針は、業務区分を「介護」の1つとし、従事する業務を次のように定めています。
(介護分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針及び育成就労に係る制度の運用に関する方針・第二の2(1))
さらに出入国在留管理庁の介護分野のページと、厚生労働省の補助事業として相談窓口を担う国際厚生事業団(JICWELS)のQ&A(Q2-11)は、身体介護のほか付随する支援業務(レクリエーションの実施、機能訓練の補助等)も実施できると説明しています。これらを合わせると、特定技能「介護」の業務範囲は次の3つの層で整理できます。
| 層 | 公式の例示 | 任せ方 |
|---|---|---|
| ① 身体介護等(主たる業務) | 利用者の心身の状況に応じた入浴・食事・排せつの介助等 | 業務の中心に据える。JICWELSは「従事する主な業務は身体介護であることが必要」と注意を促している |
| ② 付随する支援業務 | レクリエーションの実施、機能訓練の補助等 | 身体介護とあわせて日常的に任せてよい |
| ③ 関連業務 | お知らせ等の掲示物の管理、物品の補充等(同じ業務に就く日本人職員が通常行うもの) | 付随的になら可。関連業務に専従させることは認められない(JICWELS Q2-11) |
もう一つ押さえておきたいのは、運用要領が業務を「上記の試験合格等により確認された技能を要する身体介護等の業務」と書いている点です。特定技能1号の介護では、介護特定技能評価試験(技能)に加え、日本語は国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)判定A2.2(200点以上)または日本語能力試験(JLPT)N4以上と、介護特定技能評価試験(日本語)の合格が求められます(2026年3月までの試験名は介護技能評価試験・介護日本語評価試験。技能実習2号の良好修了などによる免除ルートあり)。技能の試験は全45問・60分で、「介護の基本」「こころとからだのしくみ」「コミュニケーション技術」「生活支援技術」から出題されます。つまり任せる業務の中身は、この試験で確かめた技能の範囲と重なると考えると、線引きがぶれにくくなります。要件の全体は特定技能 介護の受け入れ条件チェック、試験の中身は介護技能評価試験の難易度・合格率・対策で確認できます。
なお、介護分野には特定技能2号がありません。出入国在留管理庁は、介護福祉士の資格を持つ人のための在留資格「介護」があるため2号の対象外と説明しています。1号の在留期間は通算5年までで、その先も働いてもらう道は特定技能「介護」に2号はない|1号の5年後も働いてもらう道で解説しています。
リウス(インドネシア出身・ジンザイネシア)
特定技能 介護でできること|身体介護等の具体例
では、「身体介護等」には具体的に何が入るのでしょうか。介護特定技能評価試験(技能)の出題基準のうち「生活支援技術」の項目は、現場で任せる身体介護の中身とほぼそのまま対応しています。自施設の業務を当てはめるときの物差しとして使えます。
| 業務のまとまり | 任せられる具体的な業務 | 試験の出題範囲との対応 |
|---|---|---|
| 移動の介護 | 体位変換、起き上がりの介助、ベッドから車いすへの移乗、歩行の介助、車いすの介助、福祉用具を使った移動 | 生活支援技術「移動の介護」 |
| 食事の介護 | 食事の姿勢を整える、食事介助(とろみ食を含む)、食べる様子やむせの観察、食事量の確認 | 生活支援技術「食事の介護」(嚥下障害・誤嚥の理解を含む) |
| 排せつの介護 | トイレへの誘導と介助、ポータブルトイレ・尿器の介助、おむつ交換、排せつの記録 | 生活支援技術「排せつの介護」 |
| みじたくの介護 | 衣服の着脱、洗面・整髪などの整容、口腔ケア | 生活支援技術「みじたくの介護」 |
| 入浴・清潔保持 | 入浴介助、手浴・足浴、身体の清拭 | 生活支援技術「入浴・清潔保持の介護」 |
| 家事の介護 | 利用者の生活を支える調理・掃除・洗濯の支援、安全な居室環境の整備 | 生活支援技術「家事の介護」(ただし主たる業務にしない点は次章) |
| 観察・記録・報告 | 利用者の様子の観察、介護記録、申し送り、報告・連絡・相談、緊急時・事故発見時の初動 | 「介護の基本」「コミュニケーション技術」 |
表の最後の行のとおり、記録や申し送りは身体介護と切り離せない介護の一部です。認知症の人への声かけや関わり方も試験の範囲に入っています。ただし、記録を自立して書けるか、複雑な申し送りまで任せられるかは、在留資格ではなく日本語の力で差が出る部分です。日本語能力試験のレベルごとに任せられる業務の違いはインドネシア介護人材の日本語レベル|N4・N3・N2で任せられる業務の違いで整理しています。
病院も対象施設に含まれます。JICWELSのQ&A(Q2-12)は、特定技能の職員が病院で看護助手・看護補助者として働けること、診療科の制限はないこと、ただし患者の日常生活行動の援助が業務の中心であり、検体やカルテの運搬、事務作業に専従させることはできないことを示しています。
付随する支援業務と関連業務はどこまで任せられるか
迷いやすいのは、身体介護「以外」の仕事です。公式の説明では、ここに性格の違う2種類の業務が含まれています。レクリエーションや機能訓練の補助は「付随する支援業務」で、利用者に直接関わる介護の延長です。一方、掲示物の管理や物品の補充は「関連業務」で、同じ業務に就く日本人の介護職員が通常行っている範囲で、付随的に行うことが認められているものです。
| 区分 | 例 | 任せ方の目安 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 付随する支援業務 | レクリエーションの実施、機能訓練の補助、行事のときの利用者の誘導・見守り | 身体介護とあわせて日常的に任せてよい | 出入国在留管理庁 介護分野/JICWELS Q2-11 |
| 関連業務 | お知らせ等の掲示物の管理、物品の補充(おむつ・手袋・消毒液の補充など) | 身体介護の合間に付随的に。これだけの専任にしない | 分野別運用方針・運用要領/JICWELS Q2-11 |
「何割までならよいか」に数字の基準はない
受け入れ施設からよく出るのが「関連業務は全体の何割までなら大丈夫か」という質問です。結論として、特定技能「介護」には、関連業務の時間の割合を数字で定めた基準は見当たりません(分野別運用方針・運用要領・JICWELSのQ&Aを確認した範囲。2026年10月時点)。示されているのは「身体介護等が業務の中心であること」と「関連業務は付随的に、専従は不可」という考え方です。
参考までに、技能実習では法令(技能実習法施行規則 第10条)で時間の割合まで決められています。移行対象職種では、必須業務を業務時間全体の2分の1以上、関連業務を2分の1以下、周辺業務を3分の1以下にする必要があります。ただし、これは技能実習のルールであって、特定技能にそのまま当てはまる数字ではありません。特定技能では「割合を守っているから大丈夫」ではなく、勤務表を見て「この人の主な仕事は身体介護です」と説明できるかどうかで判断するのが実務的です。確かめ方は記事の後半の3つの問いにまとめています。
清掃・洗濯・調理・送迎・事務の扱い|迷いやすい業務の一覧
ここからが本題です。施設長が現場から実際に聞かれやすい業務を、○=任せてよい/△=身体介護に添える形なら可(専従は不可)/✕=任せないの3段階で整理しました。△の線引きはどれも同じで、「身体介護等が業務の中心にあるか」「その業務を同じ立場の日本人の介護職員も通常行っているか」「その業務だけの係になっていないか」の3点です。
| 業務 | 判定 | 線引きのポイント | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 配膳・下膳、おやつの準備 | ○ | 食事介助の前後の流れとして行うもの。厨房の盛り付け担当にはしない | 食事の介護(出題基準) |
| 居室のシーツ交換・ベッドまわりの整頓 | ○ | 利用者の安全な生活環境を整えるケアの一環。リネン庫の管理だけの係にはしない | 居住環境の整備(出題基準) |
| 送迎の添乗(乗り降りの介助・車内の見守り) | ○ | 移乗・移動の介助そのもの | 移動の介護(出題基準) |
| 記録・申し送り・ケア記録の入力 | ○ | 介護の一部。定型文や記入例を用意すると定着が早い | 記録・報告(出題基準) |
| レクリエーションの企画・実施、機能訓練の補助 | ○ | 付随する支援業務として公式に例示されている | 出入国在留管理庁/JICWELS Q2-11 |
| 利用者の衣類の洗濯・たたみ | △ | 身体介護の流れや合間に行うのは可。洗濯室の専任にはしない | 関連業務は付随的に(運用方針) |
| 共用部・施設全体の清掃 | △ | 同じ立場の日本人の介護職員も通常行っている範囲で付随的に。清掃担当としての配置は不可 | 関連業務は付随的に(運用方針) |
| 利用者と一緒に行う調理・家事(グループホームなど) | △ | 利用者の生活支援として一緒に行うのは介護の範囲。調理だけの担当にはしない | 家事の介護(出題基準) |
| 物品の補充・在庫の確認、掲示物の管理 | △ | 公式の例示どおり付随的に可。在庫管理や掲示の係だけにはしない | 運用方針/JICWELS Q2-11 |
| 送迎車の運転 | △ | 日本で有効な運転免許を持ち、道路交通法に沿って運転することが前提。介護の業務に添える形で、運転手としての専従は不可 | 訪問系Q&A 問26/関連業務は付随的に |
| 厨房での給食の調理 | ✕ | 調理員としての配置は身体介護等の業務ではない | 業務は身体介護等(運用方針) |
| 受付・電話番・請求などの事務 | ✕ | 事務職としての配置は不可。介護の業務の中で電話を取り次ぐ程度とは区別する | JICWELS Q2-12(事務作業への専従不可) |
| 病院での検体・カルテの運搬 | ✕ | 専従させることはできない。看護補助者として患者の日常生活の援助を中心に | JICWELS Q2-12 |
表の△は「やってはいけない」という意味ではありません。介護の現場では、日本人の介護職員も入浴介助の合間にタオルを補充し、食事介助の後に下膳をし、レクリエーションの掲示物を貼りかえています。同じ立場の職員が普段している範囲で、特定技能の職員にも同じように行ってもらうのが、制度が想定している姿です。問題になるのは、特定技能の職員だけが洗濯室や厨房、事務所に回され、身体介護から外れた働き方が常態化することです。
リウス
できない線引き|関連業務への専従と、対象にならない働き方
業務の中身とは別に、「どこで・どの形で働かせるか」で認められないものもあります。業務一覧の✕とあわせて、次の5つは受け入れ前に必ず確認してください。
| 認められないこと | 理由・注意点 | 根拠 |
|---|---|---|
| ① 関連業務だけを担当させる | 掲示・補充・清掃・洗濯などの専任にすると、身体介護等が業務の中心でなくなる | 運用方針/JICWELS Q2-11 |
| ② 対象施設に当たらないサービスでの業務 | デイサービスの夜間帯(お泊りデイ)は介護保険サービスの適用外のため従事できない。有料老人ホームなどは指定の種類で分かれる | 対象施設一覧/JICWELS Q2-11・Q2-13 |
| ③ 小規模多機能型居宅介護などの「訪問」部分 | 「通い」「泊まり」は可。「訪問」に従事させることは現時点で認められていない | 対象施設一覧の※2/訪問系Q&A 問25 |
| ④ 派遣で働かせる | 介護分野の特定技能は直接雇用に限られる | 運用方針 第二の2(2) |
| ⑤ 法人が営む介護以外の事業での勤務 | 業務区分は「介護」のみ。同じ法人の飲食店や清掃部門などで働かせることはできない | 運用方針 第二の2(1) |
在留資格で認められた活動の範囲を超えて働かせると、受け入れる側が不法就労助長罪に問われるおそれがあります。罰則は、2026年10月時点の現行の条文では「3年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金(併科あり)」です。令和6年の改正入管法で「5年以下の拘禁刑又は500万円以下の罰金(併科可)」へ引き上げることが決まっています(改正法は公布の日から原則3年以内に施行)。本人にとっても在留を続けるうえで不利益になりかねず、悪意がなくても「知らなかった」では済みません。施設の種類と人数枠の判定は特定技能 介護の対象施設 完全一覧と特定技能 介護の人数枠と上限で、施設ごとに確かめてください。
業務の線引きを決める前に、受け入れの全体像を1冊で確認したい方へ
特定技能1号・在留資格「介護」・EPA・技能実習の4制度の比較、採用から入社までの流れ、費用の目安、介護福祉士までの道のりをまとめた資料を無料で配布しています。社内検討にそのままお使いください。
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「服薬介助は?」「血圧を測ってもらっていい?」という質問の答えは、在留資格の制度ではなく医師法第17条などの医療関係の法律で決まります。医師・看護師などの免許を持たない人が医行為を業として行うことは禁止されており、これは日本人の介護職員にも特定技能の職員にも同じように当てはまります。つまり、特定技能だから特別に禁止される医療的ケアはなく、特定技能だから許されるものもありません。
そのうえで厚生労働省は、介護の現場で迷いやすい行為のうち「原則として医行為ではない」と考えられるものを通知で示してきました。2005年(平成17年)の通知、2022年(令和4年)12月の「その2」、そして2025年(令和7年)12月26日の「その3」です。主なものを整理します。
| 分類 | 原則として医行為ではない行為(介護職員が行える) | 主な条件 |
|---|---|---|
| 測定 | 体温測定(腋の下・耳式)、自動血圧測定器・半自動血圧測定器での血圧測定、パルスオキシメーターの装着と数値の確認 | 測った数値で投薬の要否などを判断するのは医行為。決められた範囲外の値は医療職へ報告 |
| 薬の使用の介助 | 皮膚への軟膏の塗布(褥瘡の処置を除く)、湿布の貼付、点眼、一包化された内服薬の介助、坐薬の挿入、鼻への薬の噴霧、吸入薬、分包された液剤 | 容態が安定しているなど3条件を医療職が確認し、本人・家族に伝えていること、事前の具体的な依頼があること |
| 服薬の準備(2025年12月に追加) | お薬カレンダーへの一包化された薬のセット、服薬の直前にPTPシートから薬を取り出すこと | 上と同様の条件。PTPシートをはさみで1つずつに切り離さない |
| 日常のケア | 爪切り・爪やすり、歯ブラシなどでの口腔ケア、耳あかの除去(耳垢塞栓を除く)、入れ歯の着脱と洗浄、とろみ食を含む食事介助 | 爪や皮膚に異常がない、重い歯周病がないなど、専門的な管理が要らないこと |
| 排せつ | ストマ装具のパウチにたまった排せつ物を捨てる、自己導尿の準備や体位の保持、市販の使い捨てグリセリン浣腸器での浣腸、膀胱留置カテーテルの蓄尿バッグからの尿の廃棄と尿量・色の確認 | 浣腸器の容量などの条件あり。異常に気づいたら医療職へ |
| 軽い傷の手当て | 軽微な切り傷・擦り傷・やけどの、専門的な判断や技術を必要としない処置(汚れたガーゼの交換を含む) | 応急手当を否定するものではない |
一方、次のような行為は介護職員には任せられず、医師や看護職員が行います(喀痰吸引と経管栄養は、表の下で説明する研修・認定のしくみによる場合を除きます)。
| 介護職員が行えない行為の例 | 介護職員が手伝える範囲 |
|---|---|
| インスリン注射の実施、使い終わった注射器の針を抜いて処分すること | 在宅などで、医師が指示したタイミングでの声かけ・見守り、未使用の注射器の手渡し、片付け(針の処分を除く)、記録 |
| 褥瘡(床ずれ)の処置 | 体位変換などの予防的な介護、皮膚の様子の観察と報告 |
| 経管栄養の注入の開始・停止、チューブの位置や胃ろうの状態の確認 | 経管栄養の準備と片付け(注入の開始・停止を除く) |
| 酸素吸入の開始・停止 | 酸素を流していない状態での機器の準備・片付け、加湿瓶の水の交換など |
| 喀痰吸引 | 吸引器にたまった汚水の廃棄、水の補充。吸引そのものは研修・認定などの仕組みが前提(下記) |
喀痰吸引・経管栄養は「研修+認定+登録事業所」が前提
喀痰吸引(口の中・鼻の中・気管カニューレ内部)と経管栄養は医行為ですが、2012年(平成24年)4月から、社会福祉士及び介護福祉士法にもとづき、所定の研修を修了して都道府県知事の認定を受けた介護職員や、必要な研修を修了した介護福祉士が、都道府県に登録した事業所で、医師の指示のもと看護職員と連携して行えるしくみがあります。ただし、特定技能の職員にこの研修を受けてもらい喀痰吸引などを任せることについて、在留資格の面から扱いを明記した公式資料は確認できませんでした(2026年10月時点)。導入を考える場合は、事前に地方出入国在留管理局と、都道府県の喀痰吸引等の担当窓口の両方に確認してください。
リウス
夜勤や一人での業務は任せられるか
夜勤は業務の「種類」ではなく「時間帯」の問題ですが、業務範囲を考えるうえで外せないので要点だけ押さえます。JICWELSのQ&A(Q2-13)は、対象施設に当たるサービスの中であれば、特定技能の職員は夜勤業務を行うことができるとしています。あわせて、夜勤に限らず、安全に業務を行えるまでの一定期間は経験のある職員とチームでケアに当たるなど、順応を支える体制が求められます。この期間は6か月とされていますが、最終的に夜勤へ入る時期は就労先の事業所が判断します。
特定技能の職員は、就労と同時に介護報酬などの人員配置基準に数えることができます(Q2-7)。一方、デイサービスの夜間帯(お泊りデイ)は介護保険サービスの適用外のため従事できません。一人夜勤の判断材料や、夜勤に入るまでの段階の組み方は特定技能 介護の夜勤|一人夜勤は可能?いつから入れる?で詳しく解説しています。
訪問系サービスの扱い|2025年4月21日からの条件つきの解禁
「外国人は訪問介護ができない」という話は、いまは正確ではありません。外国人介護人材の業務の在り方に関する検討会の議論を経て、特定技能は2025年4月21日から、一定の条件のもとで訪問系サービスに従事できるようになりました(技能実習は同年4月1日から)。2026年1月23日の分野別運用方針にも、事業者が守る事項として明記されています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 条件つきで従事できるサービス | 訪問介護、定期巡回・随時対応型訪問介護看護、夜間対応型訪問介護、総合事業の第一号訪問事業(障害福祉の訪問系は別の通知で留意点を規定) |
| 訪問入浴介護 | 複数人で提供するサービスのため、初任者研修の修了や事前の書類提出は求めない。職場内で入浴等の研修を受けたうえで従事する |
| 本人の要件 | 介護職員初任者研修課程などの修了(生活援助従事者研修のみの修了は不可)+介護事業所などでの実務経験1年以上が原則 |
| 実務経験1年未満の例外 | 日本語能力試験N2相当など、在留資格で求められるより高い日本語力がある場合に限り、利用者ごとに同行訪問(週1回の利用者は半年、週2回は3か月、週3回以上は2か月。同意を得て見守りカメラなどを使えば週1回の利用者は3か月) |
| 事業者が守る5つの事項 | ①訪問介護の基本事項などの研修 ②一定期間の同行訪問による訓練 ③意向を確かめたうえでのキャリアアップ計画の作成 ④ハラスメント防止の相談窓口など ⑤不測の事態に対応できる情報通信技術の活用を含む環境整備 |
| 手続き | 巡回訪問等実施機関(JICWELS)へ事前に書類を出し適合確認書の発行を受ける。利用者・家族へ書面で説明し署名をもらう。キャリアアップ計画は評価期間1年で、終了から4か月以内に定期報告 |
| 任せられる業務 | 身体介護が中心。生活援助だけを行うことは認められていないが、身体介護を中心とした訪問の一環として生活援助を行うことは認められる場合がある(Q&A 問27) |
| 取消しのとき | 適合確認書が取り消されて協議会を脱退となった法人は、脱退の日から5年間、介護分野の特定技能外国人を受け入れられない |
訪問系では、施設以上に「身体介護が中心」という線引きがはっきり示されています。掃除や調理などの生活援助だけを担当する訪問に特定技能の職員を入れることはできない、という点は、施設側の業務分担を考えるときにも参考になる考え方です。要件と手続きの詳細は訪問介護は外国人でもできる?特定技能の解禁要件・事業者の5遵守事項で解説しています。在宅系の事業所で準備を始める方は、特定技能 訪問介護対応 準備チェックシート(無料ダウンロード)で、本人要件・5つの事項・手続きを記入しながら確認できます。
就業場所として認められる範囲|施設・人数枠・協議会
業務範囲は「どこで働くか」とセットです。運用要領は、特定技能の職員が働ける施設・事業を、技能実習と同様に「介護」業務が一般に想定される範囲、具体的には介護福祉士国家試験の受験資格で「介護」の実務経験として認められるもののうち、厚生労働省が別に定めるものとしています。特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院、デイサービス、ショートステイ、グループホーム、障害者支援施設、病院・診療所などが含まれる一方、有料老人ホームは特定施設入居者生活介護の指定などの条件で分かれます。施設の種類ごとの判定は対象施設 完全一覧で確認してください。
あわせて、受け入れられる人数は事業所単位で、日本人等の常勤介護職員の総数までです。また、介護分野の特定技能・育成就労協議会には、在留資格の申請を行う前に入会しておく必要があります。手順は介護分野 特定技能協議会の加入と入会証明書の取り方にまとめています。受け入れの全体像を最初から確認したい方は、特定技能 介護の受け入れ完全ガイドから読むと迷いません。
技能実習・育成就労・在留資格「介護」との業務範囲の違い
同じ施設に複数の在留資格の職員がいると、「技能実習生にはさせていないのに、特定技能の人にはいいのか」という疑問が出てきます。業務範囲の決め方を制度ごとに並べると、違いがはっきりします。
| 項目 | 特定技能1号(介護) | 技能実習(介護) | 育成就労(介護) | 在留資格「介護」 |
|---|---|---|---|---|
| 業務の中心 | 身体介護等 | 必須業務=身体介護 | 特定技能と同一(主たる技能は身体介護等) | 介護福祉士として介護または介護の指導 |
| 周辺の業務 | 掲示物の管理・物品の補充などの関連業務は付随的に可、専従は不可 | 関連業務=掃除・洗濯・調理、記録・申し送り/周辺業務=掲示物の管理など | 特定技能と同一 | 日本人の介護福祉士と同じ考え方 |
| 時間の割合 | 数字の定めなし | 必須2分の1以上・関連2分の1以下・周辺3分の1以下 | 育成就労計画に沿って主たる技能を修得する業務に計画的に従事 | 定めなし |
| 訪問系サービス | 2025年4月21日から条件つきで可 | 2025年4月1日から条件つきで可 | 特定技能と同様の遵守事項が分野別運用方針に規定 | 従事できる |
| 夜勤などの扱い | 対象施設内なら可。順応期間の目安6か月・最終判断は事業所 | 技能実習生以外の介護職員の同時配置が求められる | 利用者の安全確保などに必要な措置を講じることが条件 | 日本人の介護福祉士と同じ |
| 制度の時期 | 通算5年まで(介護に2号なし) | 2027年4月1日に育成就労へ移行(経過措置あり) | 2027年4月1日施行・原則3年 | 介護の仕事を続ける限り原則として更新可 |
表から分かるとおり、技能実習は「技能を学ぶ」制度のため、業務を必須・関連・周辺に分け、時間の割合まで法令で決めています。特定技能は即戦力として働いてもらう制度で、数字の割合はない代わりに「身体介護等が中心」という考え方で線を引きます。2027年4月1日に始まる育成就労では、介護分野の業務区分と従事する業務は特定技能と同一とされ、就労を始めるまでに日本語「日本語教育の参照枠」A2.2相当以上が求められるなど、介護分野ならではの条件も分野別運用方針に定められています。各制度の詳細は介護の技能実習生 受け入れ完全ガイド、育成就労 介護は使える?対象業務・人数枠・日本語要件、外国人介護福祉士になるには|4つのルートをご覧ください。
職員に配れる業務一覧と、勤務表で線引きを確かめる3つの問い
ここまでの内容を、受け入れ前に現場の職員と共有できる形にまとめます。リーダーや日本人の職員から「どこまで頼んでいいんですか」と聞かれたときに、この一覧を見せれば同じ基準で答えられます。本人にも同じ一覧をやさしい日本語で渡しておくと、「頼まれたけれど、やってよいか分からない」という迷いを減らせます。
| 区分 | 業務 | 現場への伝え方 |
|---|---|---|
| 任せてよい(中心の業務) | 入浴・食事・排せつ・移動・着替え・整容・口腔ケアの介助、見守り、記録・申し送り、レクリエーション、機能訓練の補助、配膳・下膳、送迎の添乗 | 日本人の介護職員と同じように担当してもらう |
| 身体介護に添えて | 掲示物の管理、物品の補充、利用者の衣類の洗濯、清掃、利用者と一緒に行う調理、送迎車の運転(日本で有効な免許がある場合) | 同じ立場の職員が普段している範囲で。この業務だけの係にはしない |
| 医療職と決めた手順の範囲で | 体温・血圧・酸素飽和度の測定、軟膏・湿布・点眼・一包化された薬の介助、お薬カレンダーへのセット | 条件と報告の手順を看護職員と決めてから。いつもと違う数字はすぐ報告 |
| 任せない | 医行為(注射、褥瘡の処置、経管栄養の注入、酸素吸入の開始・停止など)、厨房・事務・清掃などへの専従、お泊りデイ、要件と手続きを満たす前の訪問系サービス | 頼まれても断ってよいことを、本人にも伝えておく |
勤務表で線引きを確かめる3つの問い
数字の基準がないぶん、毎月の勤務表で次の3つを確かめるのが確実です。
本人に一覧を説明するときは、専門用語をかみくだいた言い方が役に立ちます。介護の用語をやさしい日本語で言い換えた教材は外国人介護スタッフの教育に使える無料テキスト・教材まとめで紹介しています。受け入れ後の指導の進め方は外国人介護スタッフの指導方法|OJT・育成・定着のコツ、支援を任せる登録支援機関の選び方は特定技能 介護の登録支援機関の選び方をご覧ください。
リウス
よくある質問
各項目をタップすると回答が開きます。回答はすべて厚生労働省・出入国在留管理庁・国際厚生事業団(JICWELS)などの一次情報に基づいています。
Q. 特定技能の介護職員に、掃除や洗濯を頼んでもいいですか?
Q. デイサービスの送迎車を運転してもらえますか?
Q. 服薬介助や血圧測定は任せられますか?
Q. 喀痰吸引や経管栄養はできますか?
Q. 特定技能の職員に訪問介護に入ってもらえますか?
Q. 関連業務は全体の何割までなら大丈夫ですか?
Q. 病院で看護助手として働いてもらえますか?
Q. 育成就労が始まると、任せられる業務は変わりますか?
Q. 介護の特定技能に2号はありますか?
まとめ|業務範囲は「身体介護が中心か」で線を引く
特定技能「介護」の業務範囲で押さえることは3つです。①業務の中心は身体介護等(入浴・食事・排せつの介助など)で、レクリエーションや機能訓練の補助もあわせて任せられる、②掲示物の管理や物品の補充、清掃・洗濯・送迎の運転などの関連業務は付随的になら可、専従は不可(割合の数字の基準はない)、③医療的ケアの線引きは日本人の介護職員と同じで、訪問系サービスは2025年4月21日から条件つきで従事できる——この3点です。
業務の線引きを受け入れ前に決めて現場と本人の双方に共有しておくことは、在留資格の面での安全のためだけでなく、本人が安心して介護の仕事に集中し、長く働き続けるための土台にもなります。ジンザイネシアは、インドネシア人材に特化した登録支援機関(24登-011066)として、受け入れ前の業務分担の整理から採用・定着支援までを一貫してご支援しています。当社支援先の離職率は5.6%です(自社実績・2026年6月時点)。
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📌 公式情報源(ブックマーク推奨)
| 情報源 | 内容 |
|---|---|
| 介護分野の分野別運用方針(2026年1月23日閣議決定) | 業務区分・従事する業務・関連業務・訪問系の遵守事項・育成就労の条件 |
| 介護分野の運用要領(令和7年4月21日一部改正) | 従事する業務・就業できる施設の考え方 |
| 出入国在留管理庁「介護分野」 | 従事する業務(付随する支援業務の例示)・人材基準・2号の扱い |
| 国際厚生事業団(JICWELS)よくあるご質問 | 行える業務(Q2-11)・病院(Q2-12)・夜勤(Q2-13)・配置基準(Q2-7) |
| 厚生労働省「介護分野における特定技能外国人の受入れについて」 | 制度の概要・試験・協議会・関係通知の一覧 |
| 介護分野の1号特定技能外国人を受け入れる対象施設について | 対象施設の一覧と注記 |
| 介護知識・技能に関する出題基準 | 技能の試験で確かめる業務の範囲 |
| 厚生労働省「外国人介護人材の訪問系サービスへの従事について」 | 訪問系の要件・遵守事項・留意点通知とQ&A |
| 厚生労働省「原則として医行為ではない行為について」 | 平成17年通知・その2・その3とガイドライン |
| 厚生労働省「喀痰吸引等制度について」 | 喀痰吸引・経管栄養を介護職員が行うしくみ |
| 厚生労働省「技能実習『介護』における固有要件について」 | 技能実習の必須・関連・周辺業務と夜勤の扱い |
| 出入国在留管理庁「改正法の概要(育成就労制度の創設等)」 | 不法就労助長罪の厳罰化 |
本記事の制度内容は2026年10月時点。分野別運用方針・運用要領・医行為の解釈通知・訪問系の留意点は随時更新されるため、業務分担を確定する前に必ず最新の公式情報をご確認ください。個別の判断に迷う場合は、地方出入国在留管理局や都道府県の担当窓口に確認してください。
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- 介護分野 特定技能協議会の加入と概要書|在留資格の申請の前に入会する手順
- 外国人介護人材の受け入れ方 完全マニュアル|4つの在留資格ルート比較・体制づくり
この記事を書いた人
ジンザイネシア編集部株式会社ジンザイネシアの編集部です。登録支援機関(24登-011066)・有料職業紹介事業(01-ユ-300820)として、インドネシア人材の採用・受け入れ・定着を支援している立場から、特定技能・育成就労の制度と受け入れ実務を、出入国在留管理庁・厚生労働省などの一次情報にもとづいて解説しています。

この記事を監修した人
吉田 卓司株式会社ジンザイネシア代表取締役。 2000年にオイシックス・ラ・大地(東証プライム市場・3182)を共同創業し、2007年に五反田電子商事(現GDX)を創業。2012年にシンガポールへ移住し、2015年にはインドネシアでBeautynesiaを創業のうえ現地財閥法人へ売却。 10年以上のインドネシア在住経験と、日本インドネシア国交55周年の大相撲巡業主催(2013年・1万人以上集客)など現地での実績を基盤に、2023年に株式会社ジンザイネシアを創業。 本コラムでは、特定技能・育成就労に関する制度実務とインドネシア人材の採用・教育・定着支援の知見を、登録支援機関の立場から監修します。
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