特定技能 介護の給与相場と決め方|日本人と同等以上の基準・手当・処遇改善加算【2026】
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特定技能 介護の給与相場と決め方|日本人と同等以上の基準・手当・処遇改善加算【2026】

結論|3行で理解する

提示額の判定基準は世間の相場ではなく、自社で同じ仕事をしている日本人職員の実際の支給額です。日本語が不十分だから下げる、は認められません。そして処遇改善加算は外国人職員も対象です。

「同等以上と言われても、誰と比べて同等なのか分からない」——この記事は、出入国在留管理庁・厚生労働省の一次情報をもとに、比較の相手の決め方・申請で見られる根拠書類・手当と賞与の組み立て・処遇改善加算の配分・やってはいけない決め方・住居費の徴収・昇給の設計・提示額を自社で決める手順までを、施設が自分で判断できる形に整理します。(2026年8月時点)

まず押さえる3つの数字|相場・最低賃金・同等以上

給与を決めるとき、施設が見るべき数字は3つあります。そして重要なのは、この3つのうち「合否を決める」のは3つ目だけだということです。

# 見る数字 性質 施設としての使い方
世間の相場参考値。合否には関係しない求人としての競争力を見るために使う。低すぎると応募が来ない
地域別最低賃金絶対に下回れない下限毎年10月ごろ改定。時給換算で下回っていないか毎年確認する
自社の日本人職員の支給額これが判定基準同じ仕事をしている自社の日本人職員と同等以上であることを、書類で示す

⚠️ 「相場どおりに出したから大丈夫」は誤りです

よくある勘違いが、相場を調べてその金額を出せば要件を満たす、という理解です。判定されるのは相場との比較ではなく、自社の中での比較です。自社の日本人職員が同じ仕事で月24万円なのに、相場が22万円だからと22万円で提示すれば、相場どおりでも要件を満たしません。逆に、自社の日本人職員が月20万円なら、相場より低く見えても自社基準では問題になりません(最低賃金は当然に上回る前提です)。

相場の目安(参考値)

それでも「だいたいの水準を知りたい」という声は多いので、参考として整理します。あくまで求人の競争力を見るための目安であり、判定基準ではありません。実額は地域・施設種別・夜勤の有無で大きく動きます。

条件 月額(総支給)の目安 変動要因
夜勤なし・入社1年目18万〜21万円地域の最低賃金水準が下支えになる
夜勤あり(月4〜5回)21万〜26万円夜勤手当が月2万〜4万円を占めることが多い
介護福祉士 取得後24万〜30万円資格手当+等級の上昇。在留資格「介護」への変更も視野に入る
都市部と地方の差2万〜4万円程度最低賃金の差と、住居費の負担の考え方で開く

📊 相場ソースの見方

上の目安は、厚生労働省の賃金構造基本統計調査における介護職員の水準と、地域別最低賃金の全国一覧、および業界各社の公開求人情報を突き合わせた幅です(2026年8月時点)。統計は毎年更新されますので、自社の都道府県の最新値は必ずリンク先でご確認ください。賃金は年度改定・最低賃金改定で動きます。

📌 公式情報源|出入国在留管理庁「特定技能制度」(報酬の基準・特定技能雇用契約の基準)/厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧」(2026年8月時点)

「日本人と同等以上」の正しい意味|誰と比べるのか

特定技能の外国人を雇うとき、報酬額が日本人が従事する場合の報酬額と同等以上であることが、雇用契約の基準として求められます。問題は「誰と比べるのか」です。ここを取り違えると、根拠を示せません。

優先 比較の相手 こういうときに使う
第1同じ事業所で同じ業務・同程度の経験の日本人職員いちばん強い根拠。該当者がいるなら必ずこの人と比べる
第2同程度の経験の日本人がいない場合=近い経験年数の職員から補正「経験3年の人が月◯円なので、経験1年なら◯円」と賃金表に沿って説明する
第3日本人職員が1人もいない場合=賃金規程・賃金表規程どおりに当てはめた額であることを示す
第4規程もない場合=同地域・同業種の水準ここで初めて相場が出てくる。説明の負担はいちばん重い

✅ ここが実務の勘所

賃金規程と賃金表が整っている施設ほど、説明が簡単になります。「うちの賃金表では介護職・等級2・経験1年は基本給◯◯円。この方も同じ等級・同じ経験なので同額です」——この一文で説明が終わります。
逆に、規程がなく個別に決めている施設は、「なぜこの額なのか」を毎回ゼロから説明することになります。外国人職員の受け入れは、賃金規程を整える良いきっかけでもあります。

リウス

リウス(インドネシア出身・ジンザイネシア)

💡 かんたんに言うと、「よその会社と比べていくらか」ではなく「あなたの会社の中で不公平がないか」を見られています。だから、社内の賃金表がいちばん強い味方になります。

📌 公式情報源|出入国在留管理庁「特定技能制度」>特定技能雇用契約及び一号特定技能外国人支援計画の基準等(報酬額の基準・比較対象の考え方)(2026年8月時点)

比較の根拠をどう示すか|賃金規程・等級・実際の支給額

在留の申請では、報酬額の妥当性を説明する書類を求められます。「同等以上です」と書くだけでは足りません。比較した相手の実際の支給額まで示すのが基本です。

用意するもの 何を示すか つまずきやすい点
賃金規程・賃金表等級と号俸の決まり方、手当の支給条件規程が古いまま運用と食い違っていると、かえって不利になる
比較対象者の賃金台帳・給与明細同じ業務の日本人職員の実際の支給額氏名は伏せてよいが、業務内容と経験年数は明示する
雇用条件書(本人が理解できる言語の版)基本給・手当・控除・労働時間母国語版と日本語版で金額が食い違わないこと。翻訳の確認は必須
組織図・職務分掌「同じ業務」と言える根拠介護職とサービス提供責任者を混ぜて比べない
比較の説明メモ誰と比べ、なぜ同等以上と言えるか「相場を参考にしました」だけで終えない

⚠️ 申請書類の作成は行政書士へ

2026年1月1日に施行された改正行政書士法により、登録支援機関が在留の申請書類を有償で「作成」することはできません(支援委託費に含める形も同じです)。提出(取次)や必要書類の案内は可能です。見積書で「在留申請費用」が支援委託費に溶け込んでいる場合は、内訳を分けて出し直してもらってください。

受け入れ全体の手順と必要書類は 特定技能介護のインドネシア人採用|費用・期間・流れ完全ガイド、4つの在留資格ルートの違いは 【保存版】外国人介護人材の受け入れ方|4つの在留資格ルート比較 にまとめています。

📌 公式情報源|出入国在留管理庁「在留手続」(提出書類・取次の取扱い)/厚生労働省「介護分野における特定技能外国人の受入れについて」(2026年8月時点)

賃金の内訳|基本給・夜勤手当・資格手当・通勤手当・賞与

「同等以上」は総支給額だけを見るのではなく、項目ごとに日本人職員と同じ扱いになっているかで見られます。総額を合わせるために特定の手当だけ外す、という組み立ては避けてください。

項目 目安 扱い方・注意点
基本給16万〜20万円賃金表の等級・号俸どおりに当てはめる。ここを下げる調整はしない
夜勤手当1回5,000〜8,000円日本人職員と同額。夜勤に入る時期は体制を見て段階的に決める
資格手当月3,000〜15,000円介護福祉士・実務者研修などの資格に応じて日本人と同じ基準で支給
通勤手当実費規程どおり。住居を施設が用意した場合も、通勤実態があれば支給対象
処遇改善加算の配分配分ルールによる外国人職員も配分の対象。詳細は次の章で
賞与支給実績による日本人職員に出しているなら同じ算定式で出す。外国人だけ対象外にしない
昇給規程による昇給の有無と条件を雇用条件書に明記。「昇給なし」は定着に直結する

夜勤をいつから任せるか、一人夜勤は可能かは体制設計の論点です。特定技能 介護の夜勤|一人夜勤は可能?いつから入れる?配置基準と段階表 で段階の付け方を整理しています。

処遇改善加算は外国人職員も対象|配分の実務

結論から言うと、介護職員等処遇改善加算の配分対象に、在留資格による区別はありません。特定技能で働く外国人職員も、介護職員として従事している以上、配分の対象です。「外国人だから配分しない」という運用は、加算の趣旨にも同等以上の原則にも反します。

論点 実務上の扱い
外国人職員は対象か対象。特定技能・技能実習・EPA・在留資格「介護」いずれも、介護職員であれば配分対象になり得る
配分の方法基本給に組み込む/手当として出す/賞与で出す のいずれも可。施設の配分ルールを定めて全職員に同じ基準で適用する
同等以上との関係日本人職員に配分しているのに外国人職員に配分しなければ、そこで差が生まれ、同等以上を満たさなくなる
2024年度の改定従来の複数の加算が「介護職員等処遇改善加算」に一本化された。区分と要件は制度側で毎年更新される
よくある誤解「加算で上乗せしたから基本給は低くてよい」=誤り。基本給は賃金表どおりに決め、加算はその上に乗る

✅ 配分ルールは「書いておく」だけで揉めなくなります

加算の配分で現場が揉めるのは、ルールが明文化されていないときです。「常勤の介護職員に一律◯円」「経験年数に応じて◯段階」など、配分の基準を1枚にして掲示しておけば、日本人職員からも外国人職員からも納得が得られます。外国人職員には母国語で説明した記録も残してください。加算制度そのものの区分・要件は 介護職員等処遇改善加算 完全ガイド|2024年改定の一本化・区分・要件 で詳しく解説しています。

📌 公式情報源|厚生労働省「介護職員の処遇改善」特設ページ(制度概要)/同「加算の申請方法・申請様式」同「介護報酬改定に関する通知」(区分・要件は毎年更新されるため、必ず最新の通知でご確認ください/2026年8月時点)

📥 自社の賃金表に当てはめて、提示額を出す

比較対象者の設定欄、基本給・手当・加算配分の記入欄、5年分の人件費の試算欄をまとめた実務ツールを無料で配布しています。理事長・管理部長ご自身が記入して、そのまま施設内の検討にお使いいただけます。

やってはいけない決め方|日本語・国籍・在留資格を理由にした差

悪意がなくても、「まだ慣れていないから」という善意の配慮が要件違反になることがあります。よくあるものを整理します。

やってはいけない決め方 判定 正しい考え方
日本語がN4だから基本給を下げる✕ 不可日本語能力は在留資格の要件であって、賃金を下げる理由にならない
外国人だけ賞与の対象外にする✕ 不可日本人職員に出しているなら同じ算定式で出す
外国人だけ昇給なしにする✕ 不可昇給の基準を規程に定め、同じ基準を適用する
支援委託費の分だけ賃金から差し引く✕ 不可支援にかかる費用は受入側の負担。本人に転嫁しない
住居費を相場より高く徴収する✕ 不可徴収できるのは実費相当額まで。上乗せは認められない
経験年数の差を反映して差をつける◯ 可賃金表に沿った差なら問題ない。日本人にも同じ表を適用していることが前提
資格の有無で手当に差をつける◯ 可資格手当の支給基準が全職員共通であれば問題ない
リウス

リウス

⚠️ 差をつけてよいのは「経験」と「資格」だけです。「日本語」「国籍」「在留資格」で下げるのは認められません。迷ったときは「同じ理由で日本人職員の給与も下げるか」を考えてみてください。下げないなら、それは外国人だけに当てている理由です。

日本語のレベルによって任せられる業務は実際に変わりますが、それは配置と育成の設計で扱う話で、賃金を下げる理由にはなりません。レベル別に何を任せられるかは インドネシア介護人材の日本語レベル徹底解説|N4・N3・N2で任せられる業務の違い にまとめています。

📌 公式情報源|出入国在留管理庁「特定技能制度」(雇用契約の基準・支援に要する費用の負担)/厚生労働省「外国人介護人材の受入れについて」(2026年8月時点)

リウス

リウス

💬 「この金額で要件を満たしているか」だけ確認したい、というご相談は多いです。比較する相手の内訳と、これから出そうとしている額をお持ちいただければ、その場で見立てをお伝えします。30分の無料相談はこちら

手取りの話|社会保険・住居費の徴収と、本人への説明

給与でいちばん揉めるのは金額そのものより、「聞いていた額と振込額が違う」という説明不足です。総支給と手取りの差は、日本人職員にとっては当たり前でも、来日したばかりの本人にはまったく想像がつきません。

控除される項目 目安(月給22万円の場合) 説明のしかた
健康保険・厚生年金約3万〜3.5万円日本人と同じ。年金は帰国時に脱退一時金の制度があることも伝える
雇用保険約1,300円日本人と同じ
所得税・住民税約5,000〜1.5万円住民税は2年目から発生する。ここが最も驚かれるので事前に伝える
住居費実費相当(2万〜4万円)徴収できるのは実費相当額まで。賃貸借契約書の写しを示して説明する
水道光熱費実費実費。定額にする場合も実費と大きく乖離しない額にする
支援委託費控除不可受入側の負担。本人の給与から引いてはいけない
手取りの目安16万〜18万円台住居費の徴収の有無で大きく動く

✅ 内定を出す前に、手取りの見本を1枚渡す

総支給・控除・手取りを並べた給与明細の見本を、本人が理解できる言語で作って内定前に渡す——これだけで、入社後の「話が違う」がほぼなくなります。1年目と2年目(住民税が発生した後)の2パターンを作っておくと、なお丁寧です。手間は30分ですが、早期離職を防ぐ効果は大きいものです。

昇給の設計|介護福祉士の取得と在留資格「介護」への道筋

特定技能1号は通算5年が上限で、家族の帯同は認められていません。しかし介護福祉士に合格すれば在留資格「介護」に変更でき、在留期間の更新に回数の制限がなくなり、家族を呼ぶこともできます。これは本人にとって人生設計が変わる話で、賃金の設計と一体で示すと定着がまるで違います

年次 本人の状態 月額の目安 施設がやること
1年目日常業務を覚える段階18万〜21万円指導担当を決める。夜勤は複数体制から
2〜3年目夜勤に入る。実務者研修21万〜26万円研修費用の補助を検討。昇給を実際に実施する
4年目実務経験3年+研修修了で受験資格23万〜27万円国家試験の学習時間を勤務の中で確保する
5年目介護福祉士に合格24万〜30万円在留資格「介護」への変更を支援。資格手当を規程どおり支給
6年目〜在留資格「介護」で継続勤務規程どおり更新の回数に制限なし・家族帯同可。長期の戦力になる

⚠️ 「昇給なし」で採用すると、5年を待たずに転職されます

特定技能の外国人は、同じ分野の中であれば転職が認められています。日本人職員と同じように、条件の良い職場へ移ることができます。採用時の金額だけを合わせて昇給を設計しないと、2〜3年目で他施設に移られ、それまでの育成投資が失われます。「何年目にいくらになるか」を最初に示すことが、いちばん確実な定着策です。転職の仕組みと備えは 特定技能の転職 完全ガイド|手続き・必要書類・企業のリスクと「選ばれる会社」になる方法 をご覧ください。

介護福祉士の取得ルートと合格率、企業ができる支援は 外国人介護福祉士になるには|4つのルート・国家試験・合格率・企業ができる支援 完全ガイド に、技能実習から特定技能へ移る場合の手順は 介護の技能実習から特定技能への移行手続き にまとめています。

📌 公式情報源|厚生労働省「外国人介護人材の受入れについて」(4ルートと在留資格「介護」)/出入国在留管理庁「特定技能制度」(通算在留期間・家族帯同)(2026年8月時点)

提示額を決める試算のしかた(5ステップ)

ここまでを踏まえて、自社の提示額を実際に決める手順です。上から順に埋めれば結論が出ます。

やること 具体的に
1比較する相手を1人決める同じ事業所・同じ業務・同程度の経験の日本人職員。該当者の氏名と実支給額を控える
2その人の内訳を項目ごとに分解する基本給/夜勤手当/資格手当/通勤手当/加算配分/賞与
3同じ項目に、同じ基準で当てはめる経験年数と資格の差だけを反映。日本語を理由にした差は入れない
42つの下限を確認する①地域別最低賃金を時給換算で上回るか ②比較対象者と同等以上か
55年分の人件費に引き直す昇給・賞与・社会保険の事業主負担(おおむね給与の15%前後)を含めて総額を出す

📊 見落としやすい「事業主負担」

人件費を試算するとき、給与額だけで考えると足りません。健康保険・厚生年金・雇用保険・労災保険の事業主負担が、給与のおおむね15%前後かかります。月22万円なら月3万円強、年間で約40万円です。これは日本人職員と同じですので、外国人の受け入れだから増える費用ではありませんが、試算からは漏らさないでください。

収支への効き方|配置基準への算入と費用の全体像

給与だけを見ると「日本人と同じなら、わざわざ外国人を採る意味があるのか」と感じられるかもしれません。効いてくるのは、採用できるかどうかと、配置基準に入るタイミングです。

受け入れルート 配置基準への算入 収支への効き方
特定技能1号就労と同時に算入できる初月から人員として数えられる。ここが技能実習との最大の違い
技能実習(介護)原則6か月経過後(例外あり)最初の半年は人員に数えられない分、収支の立ち上がりが遅い
在留資格「介護」日本人と同じ扱い介護福祉士として、制限なく戦力になる

給与以外にかかる費用(人材紹介手数料・在留申請・渡航費・住居の初期費用・月額の支援委託費)を含めた全体像は 特定技能介護のインドネシア人採用|費用・期間・流れ完全ガイド特定技能の費用はいくら?初期費用・ランニングコスト・業種別相場まとめ に整理しています。使える補助金は 介護施設の外国人受け入れに使える補助金・助成金 完全ガイド、自治体ごとの制度は 外国人介護人材の受け入れに使える自治体支援・補助金 一覧 をご覧ください。

よくある質問

各項目をタップすると開きます。回答はすべて出入国在留管理庁・厚生労働省の一次情報に基づいています(2026年8月時点)。

Q. 特定技能の介護職員の給与は、いくらにすればよいですか?
一律の正解はありません。判定されるのは自社で同じ業務をしている日本人職員と同等以上かどうかだからです。まず比較する相手を1人決め、その方の基本給・夜勤手当・資格手当・賞与・処遇改善加算の配分を項目ごとに分解し、経験年数と資格の差だけを反映して当てはめてください。参考までに、夜勤ありで月21万〜26万円、夜勤なしの1年目で18万〜21万円あたりが目安として示されることが多いですが、これは求人としての競争力を見る数字であって、合否の基準ではありません。
Q. 日本語がまだ不十分なので、その分だけ給与を低くしてもよいですか?
できません。日本語能力は在留資格を得るための要件であって、賃金を下げる理由にはなりません。差をつけてよいのは経験年数と資格で、いずれも自社の賃金表に沿った差である必要があります。判断に迷ったときは「同じ理由で日本人職員の給与も下げるだろうか」と考えてみてください。下げないのであれば、それは外国人にだけ当てている理由です。なお、日本語のレベルによって任せられる業務が変わるのは事実ですが、それは配置と育成の設計で扱う話です。
Q. 処遇改善加算は、外国人職員にも配分しなければいけませんか?
配分の対象に在留資格による区別はありません。介護職員として従事している以上、特定技能の外国人職員も対象になり得ます。むしろ、日本人職員に配分しているのに外国人職員に配分しないと、そこで差が生まれて「日本人と同等以上」を満たさなくなります。配分の方法(基本給に組み込む・手当で出す・賞与で出す)は施設が決められますので、配分ルールを明文化して全職員に同じ基準で適用してください。区分や要件は毎年更新されるため、最新の通知でご確認ください。
Q. 支援委託費や紹介手数料を、本人の給与から差し引くことはできますか?
できません。支援に要する費用は受け入れる側の負担で、本人に転嫁することは認められていません。給与から控除してよいのは、法令で定められたもの(社会保険料・税)と、労使協定に基づき実費相当額を徴収するもの(住居費・水道光熱費など)です。住居費についても、徴収できるのは実費相当額までで、相場より高く設定して差額を得ることはできません。賃貸借契約書の写しを示して説明できる金額にしてください。
Q. 自社に介護職の日本人職員がいない場合、何と比べればよいですか?
比較の相手は段階的に考えます。①同じ業務・同程度の経験の日本人職員がいればその方 ②いなければ近い経験年数の職員から賃金表に沿って補正 ③日本人職員がいなければ賃金規程・賃金表に当てはめた額 ④規程もなければ同地域・同業種の水準、という順です。下にいくほど説明の負担が重くなりますので、賃金規程と賃金表を整えておくことをおすすめします。「うちの賃金表では介護職・等級2・経験1年は基本給◯◯円」と言えれば、説明はそれで終わります。
Q. 昇給は必要ですか。5年で帰る前提なら不要ではないですか?
昇給の設計はしておいてください。理由は2つあります。1つは、特定技能の外国人は同じ分野の中で転職が認められているため、条件の良い施設に移れること。採用時の金額だけ合わせて昇給がないと、2〜3年目で移られて育成投資が失われます。もう1つは、介護福祉士に合格すれば在留資格「介護」に変更でき、在留期間の更新に回数の制限がなくなり、家族も呼べることです。「5年で帰る人」ではなく「長く働ける人」として設計するほうが、施設にとっても得になります。
Q. 給与のことで本人と揉めないために、いちばん効くことは何ですか?
総支給・控除・手取りを並べた給与明細の見本を、本人が理解できる言語で作り、内定を出す前に渡すことです。揉める原因は金額そのものより「聞いていた額と振込額が違う」という説明不足であることがほとんどです。特に住民税は2年目から発生するため、1年目と2年目の2パターンを作っておくと親切です。あわせて、雇用条件書の母国語版と日本語版で金額が食い違っていないかを必ず確認してください。
Q. 技能実習生と特定技能で、給与の決め方は違いますか?
「日本人と同等以上」という考え方は共通ですが、収支への効き方が違います。特定技能1号は就労開始と同時に人員配置基準へ算入できるのに対し、技能実習は原則として就労後6か月を経過してからという扱いがあります。同じ給与を払っても、人員として数えられる時期が違うため、収支の立ち上がりに差が出ます。制度の違い全体は 介護の技能実習生 受け入れ完全ガイド、EPAとの違いは EPA介護福祉士候補者とは? をご覧ください。

まとめ|提示額を決める3つの原則

# 原則 守らないとどうなるか
1比べる相手は「自社の日本人職員」相場どおりに出しても、自社基準で下回っていれば要件を満たさない
2差をつけてよいのは「経験」と「資格」だけ日本語・国籍・在留資格を理由にした差は認められない。加算の未配分も同じ
3昇給と手取りを最初に示す「聞いていた額と違う」「上がらない」で2〜3年目に転職される

賃金は、採用の入口であると同時に定着の設計そのものです。金額を市場に合わせにいくのではなく、自社の賃金表を整えて「何年目にいくらになるか」を示せる状態にすることが、結果としていちばん強い採用力になります。

介護施設の外国人採用の全体像は 介護施設の外国人採用 完全ガイド|特定技能・育成就労・インドネシア人材の受け入れ・費用・定着、受け入れ後の育成と定着は 外国人介護スタッフの指導方法|OJT・育成・定着のコツと多文化マネジメント にまとめています。

📥 自社の数字を入れて、提示額と5年の人件費を出す

比較対象者の設定欄、基本給・夜勤手当・資格手当・加算配分の記入欄、事業主負担を含む5年分の人件費の試算欄をまとめた実務ツールを無料で配布しています。理事長・管理部長ご自身が10分で記入でき、そのまま施設内の検討にお使いいただけます。

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あわせて読みたい

公式情報源リスト(ブックマーク推奨)

情報源 確認できること
出入国在留管理庁「特定技能制度」報酬額の基準・雇用契約の基準・支援費用の負担・通算在留期間
同「在留手続」申請の種類・提出書類・取次の取扱い
同「手数料の改定」在留手続の手数料(2025年4月1日改定・今後の引き上げ方針)
厚生労働省「介護分野における特定技能外国人の受入れについて」対象施設・試験・協議会・訪問系サービス
同「外国人介護人材の受入れについて」4つの受け入れルートの全体像・在留資格「介護」
同「外国人介護人材に係る人員配置基準上の取扱いについて」配置基準への算入時期(特定技能は就労と同時)
同「介護職員の処遇改善」特設ページ介護職員等処遇改善加算の制度概要
同「加算の申請方法・申請様式」申請の手順と様式(年度ごとに更新)
同「介護報酬改定に関する通知」加算の区分・要件の最新の通知
同「賃金構造基本統計調査」介護職員の賃金水準(毎年更新)
同「地域別最低賃金の全国一覧」都道府県ごとの最低賃金(毎年10月ごろ改定)
⚠️ 在留資格の手数料は2026年10月1日受付分から改定されます(確定)。変更・更新の手数料は許可される在留期間で変わり、窓口で1年許可33,000円・5年以上75,000円(オンラインは27,000円・65,000円+決済手数料)、永住許可は200,000円。2026年9月30日までに受付した申請は改定前の額(窓口6,000円・オンライン5,500円)です。出典:出入国在留管理庁(2026年9月時点)

本記事の制度内容・金額は2026年8月時点。最低賃金は毎年10月ごろ、処遇改善加算の区分・要件は年度ごとに更新されます。賃金は年度改定で動きますので、提示の前に必ず最新の公式情報をご確認ください。

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西澤 志門

この記事を書いた人

西澤 志門

株式会社ジンザイネシア取締役。特定技能・育成就労の制度実務と、インドネシア人材の採用・教育・定着支援を専門とする。 登録支援機関として介護・外食・宿泊分野を中心に50社以上を支援。 一般社団法人Nocoders Japan協会理事として、AI・DXによる業務改革も推進。 本コラムでは、受入企業が「本当に知りたい」制度の実務と現場のリアルを発信します。


吉田 卓司

この記事を監修した人

吉田 卓司

株式会社ジンザイネシア代表取締役。 2000年にオイシックス・ラ・大地(東証プライム市場・3182)を共同創業し、2007年に五反田電子商事(現GDX)を創業。2012年にシンガポールへ移住し、2015年にはインドネシアでBeautynesiaを創業のうえ現地財閥法人へ売却。 10年以上のインドネシア在住経験と、日本インドネシア国交55周年の大相撲巡業主催(2013年・1万人以上集客)など現地での実績を基盤に、2023年に株式会社ジンザイネシアを創業。 本コラムでは、特定技能・育成就労に関する制度実務とインドネシア人材の採用・教育・定着支援の知見を、登録支援機関の立場から監修します。

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