外国人介護スタッフの指導・育成と定着のコツ|現場のOJTと多文化マネジメント【2026】
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外国人介護スタッフの指導・育成と定着のコツ|現場のOJTと多文化マネジメント【2026】

結論|「採れた後」こそが本番。指導・育成・定着は仕組みで決まる

「やっと外国人スタッフを採用できた。でも、ここからどう育てればいいのか」「日本語は試験に通っているのに、現場の申し送りが伝わらない」「数年で介護福祉士を取らせて、長く働いてほしいが、何から手をつければ」——外国人介護スタッフを受け入れた施設の経営者・施設長・現場リーダーから、採用直後に最も多く寄せられる相談です。

結論から言えば、外国人介護スタッフの育成と定着は「個人の頑張り」ではなく「施設の仕組み」で決まります。本記事は、採用「後」に絞り、①入職直後のOJTの組み立て方、②やさしい日本語と指示・叱り方・ほめ方、③多文化・宗教への配慮、④日本語学習(N4→N3→介護福祉士)の伴走、⑤特定技能から在留資格「介護」へのキャリアパス提示、⑥生活支援と離職の兆候への対応——を、公的データと一次情報にもとづいて手順化します。

▼ この記事の結論

定着のカギは 「やさしい日本語のOJT × キャリアパスの提示 × 生活と相談の支援」
この3点を仕組みにできた施設ほど、外国人スタッフが辞めず、戦力に育っています。

特定技能「介護」の離職率

10.6%

日本人介護職14.4%を下回る

離職理由トップ

52.1%

介護以外への転職(老施協調査)

職場が良いと感じる要素1位

66.5%

職場内コミュニケーションが良好

注目すべきは、特定技能「介護」で働く外国人材の離職率は10.6%で、同年度の日本人介護職員(14.4%)よりも低いという点です(公益社団法人 全国老人福祉施設協議会 令和6年度 外国人介護人材定着度調査、調査時期2025年1〜2月)。「外国人はすぐ辞める」は思い込みであり、辞めるかどうかは受け入れた施設の指導・支援体制に強く左右されます。本記事はその体制づくりの実務書です。

データで見る|「辞める理由」と「定着する施設」の違い

育成や指導の手法に入る前に、まず公的データで「何が定着を左右しているのか」を押さえます。感覚ではなく数字を起点にすると、施設が今すぐ手を打つべき優先順位がはっきりします。

離職率は日本人より低い。だが「介護以外への転職」が最大の流出

公益社団法人 全国老人福祉施設協議会(老施協)の令和6年度 外国人介護人材定着度調査(外国人材を受け入れている全国824施設に調査、回答192施設・対象人材1,177人、調査時期2025年1〜2月)によると、特定技能「介護」の外国人材の離職率は10.6%で、同年度の日本人介護職員の離職率14.4%を下回りました。「外国人はすぐ辞める」という先入観とは逆の結果です。

一方で、過去5年間の離職理由を見ると、施設が手を打つべきポイントが浮かび上がります。

離職理由(過去5年・複数回答) 割合 施設が打てる対策の方向
①他の職種(介護以外)へ転職 52.1% キャリアパスの提示・やりがいの可視化・成長実感の設計
②賃金への不満 36.3% 資格取得と連動した昇給・手当・処遇改善加算の還元の明示
③病気のため 26.8% 健康・メンタル面の相談体制、無理のないシフト、母国語相談
④他の施設へ転職 22.3% 職場内コミュニケーション・相談しやすさ・シフト希望の尊重

最大の流出が「介護以外への転職(52.1%)」である点は重要です。せっかく育てた人材が介護業界そのものから離れていくことを意味します。これを防ぐ最大の手段が、後述するキャリアパスの提示(特定技能→介護福祉士→在留資格「介護」)です。「この施設で5年後・10年後にどうなれるか」が見えない人は、より条件の良い別業種へ流れます。

定着している施設が「やっていること」

同調査では、外国人材が「今の職場が良い」と感じる要素も明らかになっています。これは、定着する施設が結果的にやっていることのリストでもあります。

外国人材が「職場が良い」と感じる要素 割合
①職場内のコミュニケーションが良好66.5%
②悩み・不満等の相談体制が整っている55.7%
③希望に合わせてシフトを組んでくれる52.5%
④有給休暇が取得しやすい52.2%

そして、施設が実際に行っている定着支援は、多い順に①生活相談・支援(82.8%)②住宅補助(74.5%)③インターネット環境の整備(70.8%)④通勤支援(70.3%)⑤就労相談支援(66.7%)⑥日本語研修や試験対策支援(64.1%)でした。注目すべきは、上位が「指導の技術」よりも生活基盤と相談体制であること。指導の前提として「安心して暮らし、困りごとを相談できる」環境がある施設ほど、定着しています。

採用前の見極め(人柄・日本語・相性)については 外国人介護スタッフの面接・選考ガイド で、受け入れ全体像は 介護×インドネシア人材 受け入れ完全ガイド で詳しく解説しています。本記事はその「次の段階」として、入職後に焦点を当てます。

入職90日のOJT設計|段階的な業務移譲のステップ表

外国人スタッフの育成で最も失敗しやすいのが、「即戦力だと思って一気に任せる」か「不安だからいつまでも見守りだけ」の両極端です。試験合格者でも、現場の動線・記録・申し送り・利用者ごとの個別性は別物。業務を小さく区切り、段階的に移譲することが、本人の自信と利用者の安全の両立につながります。

90日を4段階に分ける育成ステップ表

下表は、施設系を前提とした標準的な育成ステップの目安です。期間は本人の習熟度で前後しますが、「いきなり夜勤・単独」を避け、必ずペア配置から単独へ移すのが原則です。

段階/目安 主な内容(業務移譲) 指導者のねらい・チェック
第1段階
1〜2週
(見る・覚える)
施設・職員・利用者の名前と顔/生活動線・物品の場所/1日の流れの見学/緊急時の連絡先・避難経路 「分からないことを聞ける関係」を最優先で作る。母国語が通じる先輩や相談窓口を紹介
第2段階
3〜6週
(一緒にやる)
食事・排泄・移乗・入浴などの基本介助を必ずペアで実施/声かけの定型フレーズを練習/記録の書き方を一緒に 「できた手順」をその場でほめる。やり直しは人前でなく個別に。1利用者ずつ習得度を確認
第3段階
7〜12週
(見守りで任せる)
習熟した介助を見守りのもと単独で/申し送り・記録を本人主体で/利用者ごとの個別対応(嚥下・拘縮・認知症対応など) 記録は毎日チェックし、誤解の芽を早期修正。週1回の振り返り面談で不安を吸い上げる
第4段階
3か月〜
(自立・夜勤検討)
日勤の単独業務/本人と相談のうえ夜勤を段階導入(最初は先輩と複数体制)/日本語学習・資格取得計画のスタート キャリアパスを面談で提示(→第7章)。夜勤は本人の同意・体調・関係構築を前提に

⚠️ 育成のつまずきポイント

「教えたのに、なぜできない」の多くは指示が伝わっていない理由が伝わっていないのどちらかです。日本では「察する」ことが当然とされがちですが、外国人スタッフには手順と理由をセットで明示するほうが圧倒的に早く育ちます。例:「右側から介助して(=利用者が右麻痺で、健側から支えるため)」のように、なぜを一言添える。

指導役(プリセプター)を決め、負担を分散する

指導が特定の職員に集中すると、その職員が疲弊し、結果として「外国人を入れると現場が大変」という空気が生まれます。指導役を正式に任命し、業務の一部として位置づける(指導手当・記録の時間確保など)こと、そしてチーム全体で育てる意識づけが重要です。厚生労働省も外国人介護人材の受入施設への巡回訪問・相談支援を行っており、外部の支援も活用できます。

「うちの施設に合う育成ステップが知りたい」

受け入れ〜定着までの実務を、介護×インドネシアに特化したガイドにまとめました。

やさしい日本語と記録のチェック|「伝わる」を技術にする

特定技能1号「介護」の日本語要件は日本語能力試験N4+介護日本語評価試験の合格(2026年6月時点)。N4は「基本的な日本語を理解できる」レベルで、現場の敬語・方言・専門用語・申し送りまではカバーしていません。つまり「試験に通った=現場で困らない」ではない、という前提に立つことが指導の出発点です。日本語要件の詳細は 介護の日本語 N4・N3 完全ガイド を参照してください。

やさしい日本語7つのコツ

厚生労働省や日本介護福祉士会の育成ガイドでも、指導者が「やさしい日本語」で話すことが繰り返し推奨されています。難しいのは「子ども扱いの言葉」ではなく、大人に対して、構造をシンプルにして正確に伝える技術です。

  • 一文を短く:1文に1つの内容。「〜して、〜してから、〜」とつなげない
  • 結論を先に:「Aさんを起こします。理由は朝食だからです」
  • あいまい語を避ける:「ちょっと」「適当に」「いい感じに」→数字や具体で(「5分後に」「2人で」)
  • 二重否定・受け身を避ける:「やらないわけにはいかない」→「必ずやります」
  • 専門用語・略語に注意:「バイタル」「申し送り」「Aダウンロード」などは最初に意味を共有し、写真や実物で示す
  • 確認は「はい/いいえ」で終わらせない:「分かった?」→「何をしますか?」と本人に言ってもらう(理解の取り違え防止)
  • 書いて渡す:口頭だけでなく、手順は写真付きマニュアル・ふりがな付きメモで残す

記録のチェックは「直す」より「育てる」

介護記録は法令上も重要で、外国人スタッフがつまずきやすい領域です。漢字・助詞・専門表現の壁があります。ここでのコツは、赤ペンで全部直して返すのではなく、本人と一緒に読み返し、なぜその表現が必要かを伝えること。よく使う記録の定型文(「食事全量摂取」「排尿確認」「変わりなく経過」など)を例文集として用意しておくと、本人の負担が大きく下がり、記録の質も揃います。最初の1〜2か月は記録を毎日チェックし、誤解の芽(例:服薬・転倒・体調変化の記載漏れ)を早期に発見します。

叱り方・ほめ方・指示の出し方|場面別コミュニケーション対応表

「職場内のコミュニケーションが良好」は、外国人材が職場を良いと感じる要素の第1位(66.5%)でした(老施協調査)。逆に言えば、ここを外すと定着が一気に難しくなります。文化的な前提が違うため、日本人同士なら通じる「空気」や「察し」が通じないことを前提に、伝え方を場面別に設計します。

場面 よくあるNG 伝わる対応
指示を出す 「さっき言ったよね」「臨機応変にやって」 手順+理由を短く明示。最後に本人に手順を言ってもらい理解確認
間違いを正す(叱る) 人前で大声・人格否定・「だから外国人は」 人前を避け個別に。行動を具体的に指摘し、正しいやり方を一緒に確認。「次はできる」で締める
ほめる 何も言わない(できて当然とする) できた行動をその場で具体的に。「声かけが丁寧で利用者さんが安心していた」など。成長実感が定着の核
「分かりました」と言うが実は… 言葉どおり理解したと判断して放置 体面を重んじ「分かった」と言う文化的傾向に配慮し、復唱・実演で確認。聞き返しを歓迎する空気を作る
悩み・困りごとの把握 「何かあれば言ってね」で終わり 定期面談を仕組み化(週1→月1)。母国語で相談できる窓口・先輩を用意(相談体制は満足度2位55.7%)
シフト・休暇 一方的に組む/申請しづらい空気 希望を聞いて組む(満足度3位52.5%)。有給を取りやすく(4位52.2%)。母国の祝祭日・帰省も早めに相談

共通する原則は「人前で叱らず、個別に。ほめるのは具体的に、その場で」。インドネシアをはじめ東南アジア圏では年長者・上司を立てる文化が強く、体面(メンツ)を守る配慮が信頼関係に直結します。これは甘やかしではなく、長く働いてもらうための合理的なマネジメントです。

多文化・宗教への配慮|ムスリム対応を含む

インドネシアは世界最大のムスリム人口を擁する国で、当社が支援する人材にもムスリムが多くいます。とはいえ、過度に身構える必要はありません。穏健な信仰の人が大半で、必要な配慮は事前のすり合わせで運用できます。配慮を「特別扱い」ではなく「働きやすい環境整備」と捉えると、結果的に日本人職員にとっても良い職場になります。

配慮の領域 内容 現実的な運用
礼拝(1日数回) 短時間で済む。清潔な小スペースがあれば可 休憩室の一角・空き部屋を活用。休憩時間内に調整。完璧な専用室は必須ではない
食事(ハラル) 豚肉・アルコールを避ける。本人が弁当持参も多い 職員食の成分表示・弁当持参の許可。利用者の食事介助に支障はない
断食月(ラマダン) 日中の飲食を控える期間(年1回・約1か月) 体調に配慮しシフトを相談。本人と無理のない範囲を確認
服装 ヒジャブ着用を希望する人がいる 衛生・安全(誤飲・引っかかり)を満たす範囲で相談。介護用の制服と両立できる形を

食事の配慮は 介護現場のハラル食対応、宗教・生活面の総合的な配慮は ムスリム介護スタッフ受け入れの配慮ポイント で具体的にまとめています。最も大切なのは採用後すぐに本人と希望をすり合わせること。「こうしてほしい」を言える関係が、信頼と定着の土台になります。

日本語学習の伴走|N4→N3→介護福祉士

日本語学習は「本人任せ」にすると伸びず、定着支援として施設が伴走すると定着率もキャリアも変わります。老施協調査でも「日本語研修や試験対策支援」を64.1%の施設が実施しています。ゴールは単なる試験合格ではなく、記録が書け、利用者・家族と信頼関係を築ける日本語です。

段階 到達イメージ 施設の伴走
入職時
N4相当
基本会話は可。敬語・記録・申し送りは要訓練 写真付きマニュアル・記録の例文集・やさしい日本語での指導
1〜2年目
N3を目標
業務中の会話・記録がかなり自立。家族対応の幅も広がる 学習時間の確保・オンライン講座費用補助・合格祝い金や手当との連動
3〜4年目
介護福祉士へ
実務経験3年+実務者研修で国家試験の受験資格。合格で在留資格「介護」へ 実務者研修費の補助・試験対策講座・学習仲間づくり・シフト調整

特定技能1号「介護」の在留は通算5年。この5年を「ただ働く期間」にするか「介護福祉士を取って長期定着の足場を作る期間」にするかで、施設の人材戦略は大きく変わります。試験対策の進め方は 介護の技能試験・日本語試験対策(インドネシア) で具体化しています。学習は本人のモチベーションが命なので、合格=昇給・手当・役割という「見返り」を最初に約束しておくことが効果的です。

キャリアパスの提示|特定技能→介護福祉士→在留資格「介護」

離職理由の最大が「介護以外への転職(52.1%)」であることを思い出してください。これを防ぐ最強の手段がキャリアパスの提示です。「この施設にいれば、5年で帰国ではなく、資格を取って家族を呼び、長く専門職として働ける」——この未来図を入職時から見せることが、定着の決定打になります。

在留資格「介護」が「5年の壁」を越える出口

特定技能1号「介護」は在留が通算5年・家族帯同不可ですが、在留中に介護福祉士の国家試験に合格すると在留資格「介護」へ移行できます。在留資格「介護」は更新の回数制限がなく(実質無期限)、家族帯同も可能。これが「5年で帰る人材」を「定住する専門職」に変える、制度上の出口です。

項目 特定技能1号「介護」 在留資格「介護」
前提 N4+介護日本語評価試験等 介護福祉士の国家資格
在留期間 通算5年(上限あり) 更新制・回数制限なし
家族帯同 不可
施設にとっての意味 育成・戦力化の期間 長期定着・中核人材化

介護福祉士の受験資格を得る主なルートは、①特定技能・技能実習などで実務経験3年+実務者研修を経て受験、②介護福祉士養成施設で学んで取得、③EPAルートです。受け入れた特定技能人材の多くは①を目指します。施設は実務者研修費の補助・試験対策・シフト調整で後押しできます。

⚠️ 育成就労への移行も見据える(2027年4月施行)

技能実習に代わる育成就労制度が2027年4月1日に施行予定です(日本語は就労開始までにA1相当以上)。育成就労は「特定技能1号への移行」を前提に設計されており、育成就労→特定技能→介護福祉士→在留資格「介護」という長期キャリアの入口にもなります。介護分野での育成就労の扱いは 育成就労×介護の受け入れガイド で解説しています。

賃金への不満(離職理由2位・36.3%)への最も誠実な答えも、このキャリアパスです。「資格を取れば、こう昇給する」「役割が増えれば、こう手当がつく」という道筋を数字で示すこと。漠然と「頑張って」ではなく、成長と処遇が連動していることを見せるのが、納得感のある定着につながります。

生活支援と離職の兆候・早期対応

老施協調査で、施設が行う定着支援の上位は生活相談・支援(82.8%)/住宅補助(74.5%)/インターネット環境(70.8%)/通勤支援(70.3%)でした。指導の前に、まず「安心して暮らせる」ことが定着の土台です。来日直後は、住まい・銀行口座・携帯電話・公共交通・ゴミ出し・病院など、生活のすべてが手探り。ここでつまずくと、仕事への集中も難しくなります。

生活支援のチェックポイント

  • 住まい:家具・家電付きの住居整備、家賃補助(住宅補助74.5%)。同郷の先輩と近居だと孤立しにくい
  • 通信・交通:ネット環境の整備(70.8%)は母国の家族との連絡=メンタルの命綱。通勤手段の確保(70.3%)
  • 手続き:口座開設・在留カード・行政手続きの同行支援。母国語で相談できる窓口
  • 健康・メンタル:離職理由3位は「病気のため(26.8%)」。早期の体調・心の不調に気づける関係を
  • コミュニティ:同郷の集まり・地域行事への参加。孤立は離職の最大リスクの一つ

離職の兆候と早期対応

離職は突然ではなく、必ず兆候があります。下記のサインが見えたら、責めるのではなく個別面談で背景を聴くことが第一歩です。母国語で相談できる窓口や、登録支援機関の支援担当者を介すると本音が出やすくなります。

兆候のサイン 背景に多い要因 早期対応
急に口数が減る・笑顔が減る 人間関係・孤立・ホームシック 1対1の面談。母国語窓口で本音を聴く。同郷コミュニティへつなぐ
遅刻・欠勤・体調不良が増える 心身の不調・夜勤負担・生活リズム シフト見直し・受診同行。無理のない範囲を本人と確認
給与・将来の話を繰り返す 賃金不満・キャリアの不安(離職理由1・2位) 資格取得と昇給の道筋を数字で再提示。役割を一段渡す
他施設・他業種の話題が増える 条件比較・引き抜き・成長実感の不足 この施設で得られる成長・処遇を具体化。やりがいを言語化

なお、特定技能の受け入れでは登録支援機関が生活支援・相談対応の多くを担います。施設だけで抱え込まず、専門の支援機関と役割分担するのが現実的です。機関選びの視点は 登録支援機関の選び方ガイド を参照してください。受け入れ費用やコスト全体は 介護の外国人受け入れ 費用と流れ にまとめています。

よくある質問(FAQ)

各項目をタップで開閉できます。回答はすべて公的情報・一次情報にもとづいています(2026年6月時点)。

Q. 試験に合格しているのに現場の日本語が通じません。なぜですか?
特定技能1号「介護」の日本語要件はN4+介護日本語評価試験で、N4は「基本的な日本語を理解できる」レベルです。現場の敬語・専門用語・方言・申し送り・記録までは試験範囲外なので、「試験合格=現場で困らない」ではありません。やさしい日本語で話す、写真付きマニュアルや記録の例文集を用意する、N3取得を伴走する——といった現場での育成が必要です。
Q. 「分かりました」と言うのに、実はできていないことが多いです。
東南アジア圏では、相手や上司の体面を立てて「分かりました」と答える文化的傾向があります。理解の取り違えを防ぐには、「分かった?」と聞くのではなく「何をしますか?」と本人に手順を言ってもらう・実演してもらうのが確実です。聞き返しやすい雰囲気を作ることも大切で、「質問は良いこと」と最初に伝えておくと改善します。
Q. 外国人スタッフを叱るときに気をつけることは?
原則は「人前で叱らない・個別に・行動を具体的に・人格を否定しない」です。体面を重んじる文化では、人前での叱責は強い屈辱となり、信頼関係と定着を一気に損ないます。間違いは別室で「この手順をこうしてほしい」と具体的に伝え、正しいやり方を一緒に確認し、「次はできる」と前向きに締めます。逆にほめるときは、できた行動をその場で具体的に伝えるのが効果的です。
Q. 特定技能は5年で帰国してしまうのでは?長く働いてもらえますか?
特定技能1号「介護」は在留が通算5年・家族帯同不可ですが、在留中に介護福祉士の国家試験に合格すれば在留資格「介護」へ移行できます。在留資格「介護」は更新の回数制限がなく(実質無期限)、家族帯同も可能です。つまり「実務経験3年+実務者研修→介護福祉士合格→在留資格『介護』」というキャリアパスを施設が支援すれば、5年の壁を越えて長期定着につなげられます。これが定着戦略の中心です。
Q. ムスリムの礼拝や食事への対応は負担が大きいですか?
必要な配慮は「短時間の礼拝スペースの確保」「食事で豚肉・アルコールを避ける(弁当持参も多い)」「断食月のシフト相談」が基本で、いずれも事前のすり合わせで運用できます。専用の礼拝室や特別な設備は必須ではなく、休憩室の一角や空き部屋で対応している施設が多くあります。インドネシアは穏健な信仰の人が多く、過度に身構える必要はありません。採用後すぐに本人の希望を確認しておくとスムーズです。
Q. 外国人介護スタッフはすぐ辞めると聞きますが本当ですか?
公益社団法人 全国老人福祉施設協議会の令和6年度 外国人介護人材定着度調査(調査時期2025年1〜2月)では、特定技能「介護」の離職率は10.6%で、同年度の日本人介護職員(14.4%)を下回りました。「すぐ辞める」は思い込みで、定着するかどうかは受け入れ施設の指導・支援体制に強く左右されます。職場内コミュニケーションの良さ、相談体制、シフト希望の尊重、生活支援が整っている施設ほど定着しています。
Q. 指導役の職員の負担が大きく、現場が疲弊しています。
指導を特定の職員に集中させると疲弊し、「外国人を入れると大変」という空気が生まれます。対策は、①指導役を正式に任命し業務として位置づける(指導手当・記録の時間確保)、②チーム全体で育てる意識づけ、③登録支援機関や厚生労働省の受入・定着支援事業(巡回訪問・相談支援)など外部支援の活用、です。生活面の相談は登録支援機関に役割分担し、施設はケアと現場指導に集中するのが現実的です。
Q. 離職のサインに早く気づくには?
離職は突然ではなく兆候があります。急に口数が減る・笑顔が減る(孤立・ホームシック)、遅刻欠勤や体調不良が増える(心身の不調・夜勤負担)、給与や将来の話を繰り返す(賃金・キャリア不安)、他施設や他業種の話題が増える、などです。サインが見えたら責めるのではなく、個別面談で背景を聴くこと。母国語で相談できる窓口や登録支援機関の支援担当者を介すると本音が出やすくなります。定期面談を仕組み化しておくのが最善の予防です。

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公式情報源リスト(ブックマーク推奨)

発行元 内容 URL
厚生労働省 外国人介護人材の受入れについて newpage_28131
厚生労働省 介護分野における特定技能外国人の受入れについて newpage_000117702
厚生労働省 外国人介護人材受入・定着支援等事業 newpage_50677
出入国在留管理庁 特定技能制度 isa/applications/ssw
日本介護福祉士会 国際介護人材支援(活躍のためのガイドブック) jaccw.or.jp/projects/kokusai
全国老人福祉施設協議会 令和6年度 外国人介護人材定着度調査(報道) joint-kaigo.com/articles/39794

※本記事の数値・制度内容は2026年6月時点の公的情報にもとづきます。制度は政省令等で更新されるため、最新情報は各公式ページでご確認ください。

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西澤 志門

この記事を書いた人

西澤 志門

株式会社ジンザイネシア取締役。特定技能・育成就労の制度実務と、インドネシア人材の採用・教育・定着支援を専門とする。 登録支援機関として介護・外食・宿泊分野を中心に50社以上を支援。 一般社団法人Nocoders Japan協会理事として、AI・DXによる業務改革も推進。 本コラムでは、受入企業が「本当に知りたい」制度の実務と現場のリアルを発信します。


吉田 卓司

この記事を監修した人

吉田 卓司

株式会社ジンザイネシア代表取締役。 2000年にオイシックス・ラ・大地(東証プライム市場・3182)を共同創業し、2007年に五反田電子商事(現GDX)を創業。2012年にシンガポールへ移住し、2015年にはインドネシアでBeautynesiaを創業のうえ現地財閥法人へ売却。 10年以上のインドネシア在住経験と、日本インドネシア国交55周年の大相撲巡業主催(2013年・1万人以上集客)など現地での実績を基盤に、2023年に株式会社ジンザイネシアを創業。 本コラムでは、特定技能・育成就労に関する制度実務とインドネシア人材の採用・教育・定着支援の知見を、登録支援機関の立場から監修します。

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