
育成就労制度運用要領の読み方|10章の構成と令和8年8月5日改正で受入企業がやることが変わった8点
結論|3行で理解する
育成就労制度運用要領は、本体10章+参考様式+分野別要領で構成され、審査で実際に見られる基準と提出書類が書かれた実務の正本です。令和8年4月6日と8月5日に一部改正があり、受入企業がやることが変わった項目があります。
この記事は、2027年4月の受け入れを検討している企業の経営者・実務担当者向けに、運用要領のどこに何が書いてあるか、8月5日改正で何が変わったか、自社の準備に直結する論点はどれかを、出入国在留管理庁が公表している運用要領と改正のお知らせだけを根拠に整理したものです。(2026年9月5日時点)
- 運用要領とは何か|基本方針・分野別運用方針との違い
- 構成の全体像|10章と参考様式・分野別要領
- 受入企業がまず読むべき章はどこか
- 令和8年8月5日の一部改正|企業に効く8つの変更
- 入国前の結核スクリーニングが追加された
- 従事できる業務の考え方|必須1/3・安全衛生1/10
- 日本語講習の記録と保管が明文化された
- 報酬の定義が具体化された
- 転籍の制限が1つ増えた
- 期間・記録・届出まわりの細かな変更
- 運用要領から逆算する準備チェックリスト
- よくある質問
運用要領とは何か|基本方針・分野別運用方針との違い
育成就労制度には、性質の違う3種類の公式文書があります。受入企業が実務で開くのは運用要領です。法令の条文だけでは分からない「審査で何を見られるか」「どの様式でどう出すか」が書かれています。
| 文書 | 何が書いてあるか | 企業の使い方 |
|---|---|---|
| 基本方針 | 制度全体の考え方・目指す姿 | 通読は不要。方向性の確認に |
| 分野別運用方針 | 分野ごとの受入見込数・業務区分・技能水準 | 自社の分野の該当箇所だけ読む |
| 運用要領 | 計画の認定基準・確認対象の書類・留意事項・様式 | 実務の正本。該当章を都度参照 |
運用要領は全体版のほか、章ごとに分割されたPDFで公表されています。全体版は大部なので、必要な章だけ開くのが現実的です。制度そのものの全体像は 育成就労制度とは?完全ガイド、受入要件と申請書類は 育成就労の受入要件と申請書類 で解説しています。
リウス(インドネシア出身・ジンザイネシア)
構成の全体像|10章と参考様式・分野別要領
| 章 | 表題 | 受入企業の関わり |
|---|---|---|
| 第1章 | 育成就労制度の趣旨 | 読み物。制度の位置づけ |
| 第2章 | 育成就労制度の概要 | 在留資格の手続き。結核スクリーニングが追加 |
| 第3章 | 育成就労法の目的・定義等 | 単独型・監理型の区別。送出国の法令確認 |
| 第4章 | 育成就労計画の認定等 | 最重要。全体の大半を占める。企業が読むべき本体 |
| 第5章 | 監理支援機関の許可等 | 委託先を選ぶ側として、許可基準を知る |
| 第6章 | 育成就労外国人の保護 | 相談体制・人権配慮 |
| 第7章 | 補則 | — |
| 第8章 | 養成講習 | 責任者・担当者の講習 |
| 第9章 | 違法行為の防止・行政処分 | やってはいけないこと |
| 第10章 | 罰則 | — |
これに加えて、参考様式(第1号〜第5号系列)と省令様式(別記様式第1号〜第24号)、そして分野別の運用要領があります。分野別要領は、ビルクリーニング・リネンサプライ・工業製品製造業・自動車整備・鉄道・物流倉庫・外食業・林業・木材産業について公表されています(2026年9月5日時点)。自社の分野があれば、本体と併せて必ず確認してください。
受入企業がまず読むべき章はどこか
全部を読む必要はありません。受入企業が実際に使うのは第4章で、量的にも運用要領の大半を占めます。目的別に見る場所を整理しました。
| 知りたいこと | 見る場所 | 内容 |
|---|---|---|
| 計画に何を書くか | 第4章第1節 | 申請者欄の書き方。複数法人の共同実施・労働者派遣の形態も |
| 認定の基準と提出書類 | 第4章第2節 | 業務範囲・健康診断・日本語・報酬・費用の上限など。ここが本体 |
| 転籍の扱い | 第4章第3節 | 本人意向の転籍の要件・機構からの通知の流れ |
| 期間の延長 | 第4章第5節 | 労働時間・36協定まわりの確認事項も |
| 優良な実施者の認定 | 第4章第14節 | 更新の手続きが新設された |
| 中断・再開 | 第4章第15節 | 実施困難時届出書。妊娠・出産の扱いも |
| 委託先の適格性 | 第5章第2節 | 外部監査人・密接な関係を有する者の範囲 |
令和8年8月5日の一部改正|企業に効く8つの変更
運用要領は令和8年4月6日と8月5日に一部改正されています。8月5日の改正は50項目に及び、その多くが第4章(計画の認定)です。ここでは、受入企業の準備や運用が実際に変わるものだけを抜き出しました。
| 変わったこと | 企業がやること | |
|---|---|---|
| ① | 入国前結核スクリーニングが新設 | 対象国から受け入れる場合、在留資格認定証明書の交付申請時に「結核非発病証明書」を添付 |
| ② | 送出国の法令確認が明記 | 送出機関を介さない形態では、申請前に送出国の法令に反しないか確認 |
| ③ | 共同実施・派遣形態の様式が変更 | 計画の第2面は参考様式第1-34号の別紙を使う形に |
| ④ | 日本語講習の受講証明の保管が新設 | A1相当・A2目標の講習修了資料を、実施記録や管理簿とともに保管 |
| ⑤ | 報酬の定義が具体化 | 基本給・賞与・精皆勤手当・職務手当・危険作業手当が該当と明示 |
| ⑥ | 健康状況の月1回の確認が明記 | 聞き取り・生活状況の確認を月1回実施し、管理簿に記録して事業所に備える |
| ⑦ | 転籍の制限が1つ追加 | 3年を超えて育成就労している場合は本人意向の転籍は認められない |
| ⑧ | 一時帰国の休暇の扱いが緩和 | 就業規則の有給を使い切った後は、追加の有給または無給休暇を可能な限り配慮 |
入国前の結核スクリーニングが追加された
8月5日改正で新設された項目のうち、準備の段取りが変わるのがこれです。入国前結核スクリーニングの対象とされている国から受け入れる場合、在留資格認定証明書の交付申請時に「結核非発病証明書」を提出する必要があります。
| 項目 | 運用要領の記載 |
|---|---|
| 提出先とタイミング | 地方出入国在留管理局への在留資格認定証明書交付申請の際。育成就労計画の認定申請時に機構へ提出する必要はない |
| 証明書の有効期間 | 胸部レントゲン検査の実施日から原則180日(約6か月) |
| 健康診断の資料として使う場合 | 育成就労計画の認定申請日から過去3か月以内のものが必要(180日ではない点に注意) |
| 検査機関 | 指定検診医療機関で実施した胸部エックス線撮影の結果を、健康診断の胸部エックス線撮影として扱うことも可能 |
| 対象国 | 厚生労働省のホームページを参照(運用要領は個別の国名を列挙していない) |
リウス
従事できる業務の考え方|必須1/3・安全衛生1/10
技能実習を知っている企業ほど誤解しやすいのがここです。育成就労には「関連業務」「周辺業務」という概念がありません。代わりに、時間の割合で縛られます。
| 区分 | 業務時間全体に占める割合 | 内容 |
|---|---|---|
| 必須業務 | 1/3以上 | 分野別運用方針で定める業務区分の中で、修得を目標とする主たる技能 |
| 安全衛生業務 | 1/10以上 | 安全衛生に関する業務 |
| その他の時間 | 残り | 業務区分内の業務に従事すること、これらに関連する業務に付随的に従事することは可能 |
8月5日改正では、この説明の書きぶりが整理されました。「関連業務・周辺業務という概念がない」ことに変わりはありませんが、必須業務1/3・安全衛生業務1/10という時間配分が明示され、残り時間の扱いが「業務区分内の業務」と「これに関連する業務への付随的な従事」に整理されています。
日本語講習の記録と保管が明文化された
育成就労では、就労開始までにA1相当以上の日本語能力が求められます。試験合格のほか、認定日本語教育機関の就労課程を100時間以上受講する方法があります。8月5日改正では、この受講を証明する資料の保管が新たに書かれました。
| 対象 | 保管するもの | 一緒に保管する書類 |
|---|---|---|
| A1相当講習 | 受講が完了した旨の資料(認定日本語教育機関からの受講証明書等) | 入国前講習実施記録(参考様式第4-4号・第4-5号)または入国後講習実施記録(第4-6号・第4-7号) |
| A2目標講習 | 同上 | 育成就労計画の履行状況に関する管理簿(参考様式第4-2号) |
| A2目標講習の予定 | 認定申請時に申告が必要 | 入国前・入国後に行う場合は省令様式第1号第3面等、就労期間中に行う場合は参考様式第1-35号 |
また、講習の受講機会は入国後講習中か就労期間中に提供する必要があることも明記されました。育成就労外国人は在留中、認定された計画に基づいて講習を受けるか業務に従事している必要があるためです。日本語レベルと任せられる業務の関係は 日本語レベル別に任せられる業務 が参考になります。
自社の分野の要領が出ているか、着手時期はいつか——確認だけでも
分野別要領の公表状況と、2027年4月から逆算した準備の順番をご一緒に整理します。受入費用の試算シートもご用意しています。
無料・オンライン可・しつこい営業はいたしません/登録支援機関 24登-011066
報酬の定義が具体化された
「日本人が同じ業務に従事する場合と同等以上」の判定で使う「報酬」に何が含まれるかが、8月5日改正で具体化されました。改正前は一般的な定義だけでしたが、改正後は該当するものが列挙されています。
| 扱い | 内容 |
|---|---|
| 報酬に含まれる | 基本給、賞与、出勤状況や職務内容に応じて支払われる手当(例:精皆勤手当、職務手当、危険作業手当) |
| 含まれない | 通勤手当、住宅手当など実費弁償の性格を有するもの(課税対象となるものを除く) |
住宅手当を厚くして基本給を抑える設計は、比較の分母に入らないため同等以上の判定で不利になります。給与の決め方の考え方は 特定技能 介護の給与相場と決め方 でも整理しています(制度は違いますが「同等以上」の考え方は共通です)。
なお、送出機関に支払う費用の上限も第4章第14節に定められています。上限は育成就労計画に記載された報酬の月額の2か月分で、ここでいう報酬は雇用契約で定めた給与等から算出した所定内賃金の月額です。外国通貨で支払われた費用の円換算は、財務省が公表している出納官吏レート(機構ホームページに一覧表を掲載)を使うことが8月5日改正で明確化されました。費用の全体像は 育成就労の受入費用 と 送り出し機関の費用・手数料相場 をご覧ください。
転籍の制限が1つ増えた
育成就労の転籍は、もともと条件付きです(同一業務区分内・転籍制限期間の経過・技能と日本語の水準・民間職業紹介を介さない・転籍先が優良な機関など)。「自由に転職できる制度」ではありません。
あわせて、機構が本人から転籍の申出を受けたときの通知の流れも改正されました。機構は監理支援機関と受入企業に通知しますが、本人が速やかな通知に同意しない場合は、同意した時点または転籍先の計画が認定された時点で通知されます。つまり企業側が知るタイミングが遅れることがあります。
期間・記録・届出まわりの細かな変更
| 項目 | 改正後 | 改正前 |
|---|---|---|
| 計画の期間 | 3年を下回る計画は認定を受けられない可能性がある | 3年を6か月以上下回る計画は認定を受けられない可能性がある |
| 3年の数え方 | 各年の期間を日単位で合計して3年以内(新設) | — |
| 健康・生活状況の確認 | 月1回実施し管理簿(参考様式第4-2号)に記録、帳簿として事業所に備える(新設) | — |
| 試験の受験証明 | 受験票の写し等を管理簿とともに保管(新設) | — |
| 時間外労働の届出 | 1年単位の変形労働時間制では月42時間を超えて延長する場合に届出 | 月45時間を超えて延長する場合 |
| 優良な実施者の更新 | 満了年度の実施状況報告書と併せて、優良要件適合申告書(参考様式第1-36号)と疎明資料を機構へ(新設) | — |
| 妊娠・出産による中断 | 実施困難時届出書に交付日が記載された母子健康手帳の表紙の写しを添付(新設) | — |
| 企業内転勤2号の新設 | 従来の企業単独型技能実習のうち1年以内の研修目的の受入れは、令和9年4月1日以降は在留資格「企業内転勤2号」で。通算1年が上限(新設) | — |
運用要領から逆算する準備チェックリスト
| 確認すること | 運用要領のどこ | |
|---|---|---|
| ① | 自社の分野の分野別運用要領が公表されているか | 運用要領ページの「特定の分野に係る運用要領」 |
| ② | 1日の作業を必須1/3・安全衛生1/10で説明できるか | 第4章第2節第3(2) |
| ③ | 報酬が基本給・賞与・手当で同等以上を説明できるか | 第4章第2節第10(1) |
| ④ | 受け入れ国がMOC作成国か(送出機関経由の場合) | 第4章第2節第13 |
| ⑤ | 結核スクリーニングの対象国か・検査の時期 | 第2章第2節第2/第4章第2節第3(3) |
| ⑥ | 月1回の確認と記録を誰が担当するか | 第4章第2節第6(2) |
| ⑦ | 日本語講習の受講証明の保管先を決めたか | 第4章第2節第3(8)(9) |
| ⑧ | 36協定の月42時間の届出要否 | 第4章第5節 表1 |
着手の時期そのものは 育成就労はいつから?月別準備カレンダー、技能実習からの切り替えは 育成就労 vs 技能実習 vs 特定技能、費用は 育成就労の受入費用 をご覧ください。
リウス
よくある質問
各項目をタップで開閉します。回答はすべて出入国在留管理庁が公表している運用要領と改正のお知らせに基づいています(2026年9月5日時点)。
Q. 運用要領は全部読まないといけませんか?
Q. 運用要領はいつ改正されましたか?
Q. 技能実習の「関連業務」「周辺業務」は育成就労でもありますか?
Q. 結核非発病証明書はいつ・どこに出すのですか?
Q. 「報酬が日本人と同等以上」の報酬には何が入りますか?
Q. 転籍は自由にできるのですか?
Q. 受け入れ後に毎月やることはありますか?
Q. 送出機関に払う費用に上限はありますか?
まとめ|運用要領は「自社に関係する章だけ」を最新版で
| 押さえること | 要点 |
|---|---|
| 位置づけ | 法令が「何をしてよいか」、運用要領が「どう出すか」。実務の正本 |
| 読む場所 | 第4章(特に第2節)+自社の分野別運用要領 |
| 直近の改正 | 令和8年4月6日/8月5日。8月5日は50項目 |
| 業務の割合 | 必須1/3以上・安全衛生1/10以上。関連業務・周辺業務の概念はない |
| 毎月の運用 | 健康・生活状況の確認を月1回、管理簿に記録して事業所に備える |
| 転籍 | 条件付き。3年を超えている場合は本人意向の転籍は認められない |
2027年4月から逆算して、いま何をすべきか
分野別要領の公表状況、自社の業務が必須業務1/3を満たせるか、監理支援機関をどう選ぶか。着手前の論点を一緒に整理します。
無料・オンライン可・しつこい営業はいたしません/登録支援機関 24登-011066
関連記事
育成就労制度とは?完全ガイド
2027年4月施行・技能実習との違い・対象分野・企業がすべき準備。
育成就労の受入要件と申請書類
計画作成指導者・協定書・4条件を15項目で確認。
育成就労の対象職種・分野・業務区分 一覧
自社の業務が必須業務に当たるかを確認するときに。
育成就労の転籍とは?いつから可能・条件・手続きの全ルール
今回の改正で条件が1つ追加されました。
育成就労の監理支援機関の選び方
許可基準と、委託先に任せきりにしない運用。
育成就労はいつから?月別準備カレンダー
2027年4月の受入開始から逆算した着手時期。

この記事を書いた人
西澤 志門株式会社ジンザイネシア取締役。特定技能・育成就労の制度実務と、インドネシア人材の採用・教育・定着支援を専門とする。 登録支援機関として介護・外食・宿泊分野を中心に50社以上を支援。 一般社団法人Nocoders Japan協会理事として、AI・DXによる業務改革も推進。 本コラムでは、受入企業が「本当に知りたい」制度の実務と現場のリアルを発信します。

この記事を監修した人
吉田 卓司株式会社ジンザイネシア代表取締役。 2000年にオイシックス・ラ・大地(東証プライム市場・3182)を共同創業し、2007年に五反田電子商事(現GDX)を創業。2012年にシンガポールへ移住し、2015年にはインドネシアでBeautynesiaを創業のうえ現地財閥法人へ売却。 10年以上のインドネシア在住経験と、日本インドネシア国交55周年の大相撲巡業主催(2013年・1万人以上集客)など現地での実績を基盤に、2023年に株式会社ジンザイネシアを創業。 本コラムでは、特定技能・育成就労に関する制度実務とインドネシア人材の採用・教育・定着支援の知見を、登録支援機関の立場から監修します。
Related
関連記事

QRコードで
友だち追加



