
倉庫の人材は派遣か直接雇用(特定技能)か|コスト・定着・指揮命令で徹底比較【物流倉庫】
⚡ 結論|特定技能は「派遣」では使えない。倉庫で使うなら直接雇用
特定技能1号は原則 直接雇用(派遣が認められるのは農業・漁業のみ)|倉庫は派遣からの「直接雇用への切り替え」を検討する場面
倉庫・物流現場の人手不足を、これまで派遣・請負でしのいできた企業は多いはずです。しかし派遣は料金が割高で、人が入れ替わりノウハウが溜まらないという悩みがつきまといます。そこで特定技能での直接雇用に関心が集まりますが、ここで必ず押さえるべき事実があります。特定技能1号は原則「直接雇用」で、派遣形態が認められるのは農業・漁業の2分野のみです。物流倉庫では派遣で特定技能人材を使うことはできず、受け入れるなら自社での直接雇用になります。本記事では、派遣・請負・直接雇用(特定技能)の違いを、コスト構造(変動費か固定費か)・定着とノウハウ蓄積・指揮命令・繁忙期の柔軟性・法的留意(偽装請負)の観点で徹底比較し、自社はどれが向くか・派遣から直接雇用へどう切り替えるかまでを整理します。
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本記事は 物流倉庫の外国人材 採用完全ガイド の比較検討版です。直接雇用にした場合の費用は 物流倉庫の受入費用 完全ガイド を、受入の進め方は 12ヶ月準備スケジュール を併せてご覧ください。
1. 派遣・請負・直接雇用の違い(まず整理)
倉庫の人手を確保する方法は大きく3つ。「誰が雇い、誰が指示を出すか」が決定的に違います。ここを正確に押さえると、特定技能がなぜ派遣で使えないかも理解できます。
- 労働者派遣:雇うのは派遣会社(派遣元)、指示を出すのは自社(派遣先)。自社は派遣会社に「派遣料金」を払う。
- 請負(業務委託):雇うのも指示を出すのも請負業者。自社は業務の完成に対して料金を払い、働く人に直接指示を出してはいけない(出すと偽装請負)。
- 直接雇用:自社が直接雇い、自社が指示を出す。特定技能・育成就労での受け入れはこの形。
2. 特定技能は派遣できる?(原則不可・農漁業のみ可)
🚫 特定技能1号は原則「直接雇用」。派遣が認められるのは農業・漁業のみ
特定技能1号の受け入れは直接雇用が原則です。労働者派遣の形態が認められているのは、季節による業務量の変動が大きい農業・漁業の2分野に限られます。物流倉庫を含むその他の分野では、特定技能人材を派遣で受け入れることはできません。同様に、2027年4月施行の育成就労も、監理支援機関の監理のもとで受入機関が直接雇用する形です。つまり「派遣会社から特定技能の倉庫スタッフを派遣してもらう」という使い方はできず、倉庫で特定技能を活用するなら自社での直接雇用になります。(時点:2026年6月)
この事実は見落とされがちで、「特定技能 派遣」で検索する企業も多いですが、結論は「倉庫では直接雇用一択」です。したがって実務上の論点は「特定技能を派遣で使えるか?」ではなく、「今使っている派遣・請負を、特定技能の直接雇用に切り替えるべきか?」になります。以下、その判断のために3形態を比較します。出典は 出入国在留管理庁 の特定技能制度の運用要領です。
3. 3形態の比較表
| 観点 | 派遣 | 請負(業務委託) | 直接雇用(特定技能) |
|---|---|---|---|
| 雇用主 | 派遣会社 | 請負業者 | 自社 |
| 指揮命令 | 自社が出せる | 請負業者(自社は出せない) | 自社が自由に出せる |
| コスト構造 | 変動費(派遣料金・マージン込みで割高) | 変動費(業務単位の料金) | 固定費(給与+初期・月額支援費) |
| 定着・ノウハウ | 人が変わりやすく溜まりにくい | 業者依存・自社に残りにくい | 自社に定着・蓄積する |
| 繁忙期の柔軟性 | 高い(増減しやすい) | 高い(業務委託で調整) | 低い(雇用の調整は容易でない) |
| 特定技能で可能か | ❌ 不可(農漁業のみ可) | ❌ 不可 | ✅ これが特定技能の形 |
表だけでは判断しづらいので、派遣と直接雇用それぞれのメリット・デメリットを整理します。自社の状況に当てはめてみてください。
派遣・請負
◎ メリット
- 繁忙期だけ増減できる柔軟性
- 採用・教育・労務の手間が少ない
- 初期費用がかからず始めやすい
△ デメリット
- 時給換算で割高(マージン)
- 人が入れ替わりノウハウが溜まらない
- 特定技能は使えない(農漁業のみ)
直接雇用(特定技能)
◎ メリット
- 定着しノウハウが自社に蓄積
- 指揮命令を自社で自由に
- 長期ではコストを抑えやすい
△ デメリット
- 初期費用(70〜120万円)がかかる
- 繁忙期の増減がしにくい
- 採用・教育・定着支援の手間
4. コスト構造(変動費 vs 固定費)
最大の違いはコストの性質です。派遣・請負は「使った分だけ払う変動費」、直接雇用は「先に投資して長く使う固定費」。短期では派遣が手軽でも、長期・通年で人手が必要なら直接雇用が有利になりやすいです。
💡 コストの考え方
派遣料金には派遣会社のマージンが乗るため、同じ働きでも時給換算では直接雇用より割高になりがちです。通年でフル稼働する人手なら、派遣を払い続けるより、直接雇用(初期70〜120万円+月額支援費1.5〜3万円)のほうが数年単位では総額を抑えられるケースが多くなります。一方、繁忙期だけの一時的な増員は派遣の柔軟性が活きます。詳しい直接雇用の費用は 物流倉庫の受入費用 完全ガイド を参照してください。
考え方のイメージを示します(数値は一般的な目安で、地域・業務・契約により異なります)。派遣の時給単価は、同等の直接雇用の賃金に派遣会社のマージン(一般に2〜3割程度)が上乗せされるのが通例です。通年でフルタイムに近い稼働が見込めるなら、その上乗せ分が年間を通じて積み上がるため、直接雇用の初期費用を加味しても数年で総コストが逆転(直接雇用が有利に)することが少なくありません。逆に、稼働が月の一部・季節限定なら、初期費用を回収しきれず派遣のほうが合理的です。「通年フル稼働=直接雇用が有利/スポット・季節=派遣が有利」が大まかな分岐の目安です。自社の実際の稼働時間で試算することが重要なので、概算は無料相談でも承ります。
⚠️ 「目先の手軽さ」と「数年の総額」を分けて考える:派遣は初期費用ゼロで始められる手軽さがありますが、長く払い続けると総額は大きくなります。直接雇用は最初に費用がかかるぶん、長く働くほど1人あたりの年間コストが下がります。判断は「今月いくら」でなく「3〜5年の総額」で比べてください。
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5. 定着・ノウハウ蓄積の違い
派遣・請負は人が入れ替わりやすく、現場のノウハウ(商品の置き場所・効率的な動線・品質基準)が自社に残りにくいのが弱点です。教えても辞めてしまえば、また一から教え直しになります。
直接雇用(特定技能・育成就労)は、同じ人が長く働くため、ノウハウが自社に蓄積し、生産性が上がっていきます。特定技能なら最長5年、育成就労(3年)から特定技能へ移行すればさらに長く。本人も「会社の一員」として扱われることで定着意欲が高まり、後輩を呼んでくれることもあります。とくにインドネシア人材は協調性が高く長期就労志向の傾向があり、直接雇用と相性が良いといえます(インドネシア人材のメリット・デメリット)。
ノウハウ蓄積は、地味ですが大きな差を生みます。倉庫作業は「商品の置き場所を覚えている」「効率的な動線を体で知っている」「品質基準を理解している」人ほど速く正確です。派遣で人が入れ替わるたびに教え直すと、教育の手間と、慣れない人によるミス・遅延が繰り返し発生します。直接雇用で同じ人が育てば、この「教え直しコスト」が消え、現場全体の生産性が底上げされます。さらに、定着すれば再採用の初期費用(1人70〜120万円規模)も発生しません。「定着=コスト削減」であり、直接雇用の価値は時給の比較だけでは見えない部分にこそあります。安全教育と定着の関係は 物流倉庫の安全教育・労災対策ガイド も参考になります。
6. 指揮命令と法的留意(偽装請負に注意)
請負(業務委託)でよくあるのが「偽装請負」の問題です。形式上は請負契約なのに、発注者(自社)が請負業者の労働者へ直接指示を出していると、実態は派遣とみなされ違法になります。
⚠️ 偽装請負に注意:請負なのに自社が作業手順・時間・配置を直接指示している場合、偽装請負(労働者派遣法・職業安定法違反)と判断されることがあります。指揮命令を自社で自由に行いたいなら、請負ではなく「派遣」または「直接雇用」が正しい形です。倉庫作業を自社の指示で柔軟に回したいなら、特定技能の直接雇用が最も自由度が高く、法的にもクリアです。判断に迷う場合は専門家に確認してください。
7. 繁忙期の柔軟性
派遣・請負の強みは、繁忙期だけ増やし、閑散期に減らせる柔軟性です。EC物流のセール期や年末など、物量が大きく変動する倉庫では、この柔軟性に価値があります。一方、直接雇用は雇った人を簡単に減らせないため、通年で必要な「基幹の人手」を直接雇用で固め、変動分を派遣で補うという併用が、多くの倉庫にとって現実的な最適解です。「全部直接雇用」「全部派遣」の二択ではなく、コア=直接雇用/バッファ=派遣の組み合わせで考えると、コストと柔軟性のバランスが取れます。どの程度をコアとして直接雇用で固めるかは、過去1年の月別の稼働実績(最も人手が要らなかった月の人数)を「通年で必要な基幹人数」の目安にすると、過不足のない設計がしやすくなります。
8. どちらが向くか|判断の軸
| こんな倉庫は… | 向いている形 |
|---|---|
| 通年でフル稼働の人手が要る/ノウハウを自社に蓄積したい/長期の人手不足 | 直接雇用(特定技能・育成就労) |
| 繁忙期だけ一時的に増員したい/業務量の波が非常に大きい | 派遣(バッファとして) |
| 通年の基幹人手+繁忙期の変動の両方がある(多くの倉庫) | 併用(コア=直接雇用/バッファ=派遣) |
イメージしやすいよう、倉庫でよくある3つのケースで最適解を示します。自社に近いものを参考にしてください。
ケースA:定温・常温倉庫で通年フル稼働(メーカー物流・3PLの基幹拠点)
→ 直接雇用(特定技能・育成就労)が最適。波が小さく通年で人手が要るため、派遣のマージンを払い続けるより定着・蓄積する直接雇用が有利。リーダー級を育てて現場の核に。
ケースB:EC物流でセール期に物量が数倍(波が非常に大きい)
→ 併用が最適。通年で回す基幹人数を直接雇用で固め、セール期の上振れを派遣で補う。直接雇用のコア人材が繁忙期の派遣スタッフを指導すると品質も安定。
ケースC:短期スポットの臨時増員のみ(年数回の棚卸し等)
→ 派遣が合理的。稼働が一時的で初期費用を回収できないため、直接雇用は不向き。スポットは派遣・請負で対応する。
9. 派遣・請負から直接雇用への切り替え手順
「派遣コストが高く、通年の人手なら直接雇用に切り替えたい」という場合の進め方です。いきなり全部を切り替えるのではなく、通年で必要な人数を見極めて段階的に進めるのが安全です。
- 必要人数の見極め。通年で必要な「基幹人数」と、繁忙期だけの「変動人数」を分ける。基幹分を直接雇用の対象に。
- 制度・費用の確認。特定技能か育成就労か、初期・月額費用と社内体制を確認(費用ガイド)。
- パートナー選定。登録支援機関/監理支援機関を選ぶ(選び方ガイド)。
- 採用・受入準備。募集・面接・在留申請・住居・教育を逆算で進める(12ヶ月準備スケジュール)。
- 段階移行。基幹を直接雇用に置き換えつつ、繁忙期の変動は派遣で残す併用へ。現場が混乱しないよう段階的に。
📌 「今いる派遣スタッフをそのまま直接雇用に」はできる?
現在 派遣で来ている外国人を自社の直接雇用に切り替えたい場合、いくつか確認が要ります。①本人の在留資格が特定技能に該当するか(在留資格や合格要件を満たすか)、②派遣会社との契約(紹介予定派遣でなければ、引き抜きに関する取り決めの確認が必要なことがある)、③本人の同意。トラブルを避けるため、派遣会社との関係と本人の在留資格を整理してから進めるのが安全です。判断が難しい場合は登録支援機関・専門家に相談してください。
10. よくある質問(FAQ)
各項目をタップで開閉できます。回答は出入国在留管理庁などの一次情報に基づきます(時点:2026年6月)。
倉庫で特定技能の人材を派遣で受け入れることはできますか?
派遣と直接雇用、結局どちらが安いですか?
請負(業務委託)で外国人に倉庫作業をやってもらうのはどうですか?
今は派遣でしのいでいますが、直接雇用に切り替えるべきでしょうか?
直接雇用にすると、繁忙期と閑散期の波に対応できますか?
育成就労も派遣はできないのですか?
11. まとめ
特定技能1号は原則「直接雇用」で、派遣が使えるのは農業・漁業のみ。倉庫で特定技能を活用するなら直接雇用一択です。派遣・請負は変動費で繁忙期に強い一方、コストが割高でノウハウが溜まりにくい。直接雇用は固定費ですが、定着・ノウハウ蓄積・指揮命令の自由度で優れ、通年の人手なら数年で総額を抑えられます。多くの倉庫にとっての最適解は「通年の基幹=直接雇用/繁忙期の変動=派遣」の併用。今 派遣でしのいでいる企業は、まず通年の必要人数を見極め、その分を特定技能・育成就労の直接雇用へ段階的に切り替えるのが現実的です。
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3制度の違いと選び方
📚 公式情報源(ブックマーク推奨)
| 機関 | 情報内容 | URL |
|---|---|---|
| 出入国在留管理庁 | 特定技能制度(直接雇用の原則・派遣の例外) | https://www.moj.go.jp/isa/ |
| 厚生労働省 | 労働者派遣・請負(偽装請負の判断基準) | 労働者派遣・請負 |
| 厚生労働省 | 育成就労制度の概要(2027年4月施行) | 育成就労制度の概要 PDF |
※ 本記事の制度・法令の説明は2026年6月時点の一般的な整理です。派遣・請負・直接雇用の選択や偽装請負の判断は個別事情により異なるため、最新の要件は公式情報源・専門家でご確認ください。自社の稼働に応じた最適な人材活用は無料相談で個別にご案内します。

この記事を書いた人
西澤 志門株式会社ジンザイネシア取締役。特定技能・育成就労の制度実務と、インドネシア人材の採用・教育・定着支援を専門とする。 登録支援機関として介護・外食・宿泊分野を中心に50社以上を支援。 一般社団法人Nocoders Japan協会理事として、AI・DXによる業務改革も推進。 本コラムでは、受入企業が「本当に知りたい」制度の実務と現場のリアルを発信します。

この記事を監修した人
吉田 卓司株式会社ジンザイネシア代表取締役。 2000年にオイシックス・ラ・大地(東証プライム市場・3182)を共同創業し、2007年に五反田電子商事(現GDX)を創業。2012年にシンガポールへ移住し、2015年にはインドネシアでBeautynesiaを創業のうえ現地財閥法人へ売却。 10年以上のインドネシア在住経験と、日本インドネシア国交55周年の大相撲巡業主催(2013年・1万人以上集客)など現地での実績を基盤に、2023年に株式会社ジンザイネシアを創業。 本コラムでは、特定技能・育成就労に関する制度実務とインドネシア人材の採用・教育・定着支援の知見を、登録支援機関の立場から監修します。
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